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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

痛風

針生 光博 (山形県立日本海病院 整形外科医長)

針生光博(県立日本海病院整形外科医長)

足の親指の付け根が突然、激痛に襲われ、赤く腫れあがり、ほんの少しの動きや、音さえも足に響き、新たな激痛を覚えてしまう、まさに字のごとく「風が吹いても痛い」病気が痛風です。

日本では、1960年以前、痛風はまれな病気でしたが、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加に伴い増加し、現在30~60万人の患者数と推定されています。痛風は主に中年以降の男性と閉経期以後の女性が罹患していましたが、発症年齢の若年化が認められ、30歳代にピークが移ってきています。

食生活と関わりが深い痛風は血液中に尿酸が増えてしまうことによって起きます。尿酸は体内でプリン体と呼ばれる物質が分解されて出来るものです。プリン体は食事から摂取されるだけでなく、新陳代謝によっても産生され、肝臓で代謝されて尿酸となり、体内には1200mgが尿酸プールとして蓄積されています。尿酸は腎臓で老廃物となり、1日平均750mgが排泄されています。一定以上の尿酸が血液中に増えると高尿酸血症(7mg/dl以上)となります。

尿酸が増加する原因は、体内で尿酸が作られすぎる場合と尿酸の排泄がうまくいかず、たまってしまう場合があります。尿酸が過剰に増えてしまうと針状の結晶になって体のいろいろな場所に沈着し、それが関節に沈着した場合激しい痛風発作を起こします。初回発作の約90%が足の指の関節周辺で起きます。痛風発作が起きても放っておくと、関節やその周辺に尿酸の結晶がたまり、痛風結節というこぶが出来ることがあります。尿酸が増えれば腎臓にも負担がかかり、処理しきれなくなった尿酸は結晶化して腎臓にたまり、腎障害を起こしてしまいます。また、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などが高率に合併しており、この合併症が虚血性心疾患や脳血管障害の発症率を高くしていると考えられています。

治療法は痛風発作時には消炎鎮痛剤の投与が一般的で、血中尿酸値を下げる薬は症状を悪化させる場合があるので、使用しません。痛みがとれたら、高尿酸血症の治療(食事指導、尿酸排泄促進剤あるいは尿酸生成抑制剤の投与)と尿路管理を行います。プリン含有量の高い食物はレバー、カツオブシ、煮干し、干し椎茸、大正エビなどで、プリン含有量が低い食物は米、パン、うどん、そば、カズノコ、ノリ、ワカメ、白菜、ナスなどです。過食、高プリン・高脂肪・高タンパク食嗜好、常習飲酒、運動不足などの生活習慣は高尿酸血症の原因となるばかりでなく、合併症である肥満、高血圧、糖尿病などと深く関係するので、こうした生活習慣を正すことがとても大切です。

いずれにせよ、検査で尿酸値が高めだと診断された場合、専門の医療機関を訪れて異常がないか検査することが重要です。

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