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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

高脂血症(1)

伊藤 誠 (山形県立日本海病院 内科・循環器科医長)

伊藤 誠(県立日本海病院内科・循環器科医長)

高脂血症とは、血清脂質(コレステロールや中性脂肪)の高い状態をいいますが、動脈硬化の重要な危険因子のひとつと考えられています。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞のように、後遺症を残し、死にもつながるような病気を引き起こします。近年、日本人の食習慣の欧米化や運動不足などにより、高脂血症と診断される人が増加しており、問題となっています。今回は、高脂血症の診断とその意義などについて、説明します。

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、空腹時の血清総コレステロール220 mg/dl以上、中性脂肪 (トリグリセリド) 150 mg/dl以上を高脂血症と診断します。また、HDLコレステロールは善玉コレステロールともいわれますが、40 mg/dl未満を低HDLコレステロール血症といい、動脈硬化の危険因子とされています。また、善玉に対して悪玉といわれるLDLコレステロールがあり、次のような計算式:LDLコレステロール=総コレステロール-HDLコレステロール-(中性脂肪)÷5で求められ、140 mg/dl以上の場合を高LDLコレステロール血症といいます。

コレステロールは、細胞膜やホルモンの原料となり、体に不可欠な成分ですが、高コレステロール(特にLDLコレステロール)血症が長期間つづくと、動脈壁にコレステロールが沈着し、動脈硬化を起こしやすいことが明らかになっています。総コレステロールが200から220 mg/dlへと上がると、虚血性心疾患 (心筋梗塞や狭心症) の危険度が1.5倍へと上がり、さらに高値となると右肩あがりに危険度が上がります。ですから、診断基準の総コレステロール220 mg/dl、LDLコレステロール140 mg/dlはあくまで診断のための値で、管理目標はもっと低い値に設定されています。一般にはそれぞれ200mg/dl以下、120mg/dl以下となっていますし、虚血性心疾患をもっている人はもっと低い値が目標になります。

また、中性脂肪は、それ自体は動脈硬化の原因にはなりませんが、高いとHDLコレステロールが減り、LDLコレステロールが増えやすくなるため、間接的に動脈硬化を促進します。また、高トリグリセリド血症は、最近話題となっているメタボリック症候群の診断基準の1つとなっており、このような人は危険因子をいくつも持っていることが多く、動脈硬化が起きやすいことが知られています。

高脂血症は、健診の採血でたまたまみつかるという場合が多いと思いますが、高血圧と同様に無症状なので、放置されがちです。しかし、心臓を栄養している血管の動脈硬化が原因で起こる急性心筋梗塞の患者さんの半数以上は、初めて胸痛を感じたという方です。つまり、症状が出てからでは遅い場合もあるということになります。さまざまな研究でコレルテロール低下療法が心臓・血管系の病気を予防(再発予防を含めて)することが明らかになってきていますので、早期の治療が重要です。健診で高脂血症を指摘された場合には、早めに医師の診察をうけることをお奨めします。

次回は、高脂血症の治療について紹介します。

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