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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

高脂血症(2)

伊藤 誠 (山形県立日本海病院 内科・循環器科医長)

伊藤 誠(県立日本海病院内科・循環器科医長)

今回は高脂血症の原因と治療について説明します。

高脂血症の原因

高脂血症の原因には大きく分けて、1.遺伝子異常によるもの、2.体質+生活習慣によるもの、3.他の病気や薬によるもの(2次性高脂血症)があります。1の代表が家族性高コレステロール血症です。LDLコレステロールを血中から細胞に取り込むLDL受容体に異常があるため、血清コレステロール値が300~1000mg/dlにも上がり、若年でも動脈硬化が起きます。このような遺伝子病は代謝の異常ですから、薬物療法が必要になります。2はもっとも多い原因で、もともと高脂血症になりやすい体質の人に生活習慣の乱れが加わることによってなります。そのことを示す興味深い研究があります。日本に住む日本人と、ハワイやサンフランシスコに移住した日系人の間で血清脂質を比較した研究データでは、日系米国人の方がコレステロール値の高いことが示されました。このことは遺伝的背景が同じでも生活習慣の欧米化でコレステロール値が上がることを示しており、食事・運動療法が大切であることがお分かりいただけると思います。3は糖尿病、肝臓病、甲状腺の病気や血圧の薬などが原因となって起こります。この場合は原因となっている病気の治療や薬剤中止で改善されますので、この意味でも早めに医師の診察をうけることが大切です。

高脂血症の治療

食事療法

食事療法は高脂血症治療の中心となる大切なものです。総摂取エネルギー量を制限し、栄養のバランスをよくすることが重要です。適正エネルギー摂取量は(標準体重)×25~30(kcal)で計算され、標準体重とは22 x (身長(m))²です。また、脂肪摂取では、飽和脂肪酸の多い動物性脂肪をさけ、不飽和脂肪酸の多い青魚や植物性脂肪をとることが理想的です。高コレステロール血症の場合は、コレステロールの多い食品(うなぎ、ベーコン、レバー、魚卵、脂肪の多い肉など)を控え、食物繊維の多い食品をとることが推奨されます。また、高中性脂肪(トリグリセリド)血症の場合には、カロリー制限がとくに重要で、アルコール摂取や間食を控えることがポイントです。

運動療法

運動療法も食事療法と一緒に取り入れられるべき基本的治療法です。運動療法は、1.悪玉のLDLコレステロールを下げる、2.善玉のHDLコレステロールを上げる。3.中性脂肪を下げるなどの効果があります。ただし、始める前には、運動しても問題がないか、医師のチェックをうけて下さい。運動の種類としては、速歩、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を1日30~60分、週に3回以上つづけるのが理想です。自分にあったものを選んで、長く続けることが大切です。

薬物治療

薬物療法の開始時期は3~6ヵ月間の生活習慣の改善を行っても目標値に達しない場合というのが一般的です。ただし,家族性高コレステロール血症やすでに動脈硬化のある場合には、すぐに始められます。薬は大きく分けると、コレステロールを下げるものと中性脂肪を下げるものがあり、病状に応じて選択されます。

表 患者カテゴリー別管理目標値

治療の目標値

前回の記事でも簡単に触れましたが、日本動脈硬化学会のガイドラインでは、表のように高コレステロール血症の管理目標値を定めています。動脈硬化の危険因子の数が多いほど目標値は低く、冠動脈(心臓を栄養している動脈)疾患のある場合にはさらに低く設定されています。

薬を処方する医師は管理目標を念頭に入れて治療していますので、自己判断で服薬を中止しないことが大切です。また、服薬をしていても、食事療法や運動療法を継続することも大切です。

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