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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

脂肪肝について

鈴木 義広 (山形県立日本海病院 内科・消化器科医長)

鈴木義広(県立日本海病院内科・消化器科医長)

皆さんは脂肪肝というものをご存じでしょうか? あまりぴんと来ない場合にはフランス料理で有名なフォアグラと同じと考えてください。つまり肝臓に中性脂肪がたまり、栄養過多になって肝臓がフォアグラと同じように黄色調なるのです。健康診断にて肝機能異常を指摘され病院で精密検査をした結果、脂肪肝と診断された方もおられるかと思います。基本的に自覚症状に乏しく病識を持ちにくい疾患です。

脂肪肝の原因としてはアルコール摂取や食事などの生活習慣に問題がある場合が多く、近ごろ話題のメタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積を基盤とした症候群)と深い関係があります。BMI(肥満の指標)の数値が高いことが脂肪肝の発症に密接にかかわっていることは以前より知られていますが、BMIが正常で一見したところ肥満に見えない方に脂肪肝を認めることがあります。これは内臓脂肪の蓄積により、肝臓に行く血流(門脈という)を通じて遊離脂肪酸が多く肝臓に流れ込み、肝臓の細胞で中性脂肪がたくさんつくられることで脂肪肝が発症するのです。

先に述べたように自覚症状が少なく脂肪肝と診断されても放置される方が多くいらっしゃいますが、内臓脂肪が蓄積している可能性が高く、引いては糖尿病や心筋梗塞など発症基盤となる前出のメタボリックシンドロームの状態である危険性があり、そのまま放置するといずれ恐ろしいことが起こるかもしれません。

最近食事が欧米化し肥満の方が増えてきているものの、欧米人と比較して日本人の体型はまだまだスリムに見えます。ところが、日本人はもともと人種的にエネルギーを倹約して内臓脂肪を蓄積しやすい遺伝子(飢餓には強い)を持っているため、わずかな体重の変化でも内臓脂肪をため込んでメタボリックシンドロームを発症しやすいのです。BMIがそれほど高くないにもかかわらず、糖尿病あるいは糖尿病予備軍が急激に増加しているのは同様の理由からです。

また最近、脂肪肝で片付けられていたものに、よく調べてみるとNASH("ナッシュ"とよむ)という肝臓の組織に炎症と線維化をきたし、肝硬変へと進展し肝臓がんを発症する肝炎の一種が含まれていることがわかってきました。NASHの場合は肝硬変、肝がんへの進展を防ぐことが肝要です。外来での検査では、脂肪肝とNASHの区別をつけることは困難で、入院して肝臓の組織検査をしなければなりません。

脂肪肝もNASHの治療の基本は食事療法です。1kg/1~2カ月のペースで減量することが提唱されています。しかし、急激な体重減少はNASHの増悪をきたすことがあり注意を要します。脂肪肝そのものに薬物療法を行うことはあまりありませんが、ある程度の肝機能異常が続く場合、肝機能の改善を目的に肝庇護剤を投与します。高脂血症や高血圧、糖尿病を合併する場合にはそちらの治療も併せて行います。

まずは「脂肪肝」と言われたら、一度肝臓専門医の診察を受けることをお勧めします。

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