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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

肥満症

渡辺 裕哉 (山形県立日本海病院 内科医長)

渡辺 裕哉(山形県立日本海病院 内科医長)

近年、日本でも食生活や生活様式の欧米化に伴い肥満者の割合が急速に増加しています。

肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態であり、BMI(体格指数)25以上を肥満と定義しています。その中で、2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの合併症を伴うもの、内臓脂肪型肥満、あるいは食行動異常を伴う肥満は「肥満症」とよばれ治療の対象になります。肥満は皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満に分けられます。

肥満は、おもに遺伝因子と環境因子の相互作用によって発症します。環境因子としては、おもに食事性の因子と運動があげられます。食事回数が少なくまとめて食べるタイプで肥満の頻度が高くなっており、摂取カロリーに対する脂肪の割合は肥満者で増加しています。さらに運動不足により体脂肪が増加します。

最近「メタボリックシンドローム」がメディアなどでよく取り上げられてます。高血圧、高血糖、高脂血症などの危険因子がいくつか集まると、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患が起きやすいということから出てきた疾患概念です。腹部に蓄積される内臓脂肪がこれらの異常を引き起こすと考えられています。診断基準を表2に示します。ここで注意が必要なのは、ウエスト周囲径はズボンやスカートなどのウエストサイズではなく、臍(へそ)の高さで測るのが原則ということです。男性85cm以上、女性90cm以上は内臓脂肪面積100平方cm以上に相当します。

2006年5月に厚生労働省より、メタボリックシンドロームの有病率が発表されました。メタボリックシンドロームが強く疑われる者とその予備軍と考えられるものが、1960万人存在することが明らかとなりました。特に問題となっている男性では、40歳以降で予備軍も含め45.6%、すなわち成人男性2人に1人がメタボリックシンドロームが強く疑われる者・予備軍と考えるものに該当しました、新たな国民病といった感じです。

メタボリックシンドロームをはじめ、肥満症の治療の原則は、体重を減少させることです。肥満に基づく健康障害は肥満者の体重の5%、BMIにして2.0減少すると改善することが知られています。しかし、体重を減少させる治療薬はほとんどなく、食事療法・運動療法などの生活習慣の改善が肥満治療の主体となります。これが、肥満の治療を難しくしている要因の一つです。栄養士からの食事指導・栄養指導、医師による全身管理、運動療法の指導など専門家のアドバイスと長期にわたる治療が必要となっていきます。肥満症で悩んでいる方は、民間ダイエット法を試す前に一度専門医療機関の受診をお勧めします。

表1
  • BMIは肥満の指数でボディ・マス・インデックス(体格指数)の略です。
  • 計算式 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出します。
BMI 判定
18.5未満低体重
18.5~25未満普通体重
25以上肥満
(日本肥満学会)
表2
メタボリックシンドロームの診断基準
  1. ウエスト周囲径:男性85cm以上、女性90cm以上
  2. 中性脂肪150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl未満
  3. 収縮期血圧130mmHg以上かつ/ または拡張期血圧85mmHg以上
  4. 空腹時血糖値110mg/dl以上
1に加え、2~4のうち2項目以上該当する場合(薬物治療を受けている場合を含む)
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