文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

心房細動

伊藤 誠 (山形県立日本海病院 内科・循環器科医長)

伊藤 誠(県立日本海病院内科・循環器科医長)

心房細動とは、その名が示すように心房が細かくけいれんするように動き(細動)、脈がバラバラになる不整脈です。心房細動はそれ自体で命をおとすことはまれな、比較的頻度の高い不整脈ですが、加齢により増加する傾向のある病気で、ほとんどの患者さんが何らかの治療を必要としますので、これからの高齢化社会においては治療の対象になる人の多い病気といえます。米国での調査では、心房細動の有病率は一般人口では0.4%、80歳以上の高齢者では6%以上であったと報告されています。

さて、なぜ心房細動があると問題なのでしょうか。図にあるように、正常な心臓では右心房の上部にある洞結節から電気信号が1分間に約50~100回(安静時)出され、心房全体に伝わり心房を収縮させた後、房室結節という中継路を通して少し遅れて心室に伝わり心室を収縮させます。このようにして、正常な心臓は心房と心室を順次しっかり収縮して、無駄なく全身に血液を送り出しています。

しかし、心房細動では、心房自体から1分間に300~600回の頻度で電気信号が発生し、心房全体がけいれんするように細かく動き、心房のまとまった収縮や拡張がなくなります。その結果、心房から心室へ効率よく血液が送れなくなり、心臓全体のポンプ作用が低下して心不全に陥る可能性があります。また、心房に血液が滞って血栓をつくりやすくなり、その血栓が脳血管を詰まらせれば脳梗塞になります。脳梗塞の原因の約3分の1は心臓からとんだ血栓といわれており、後遺症を残すような大きな脳梗塞を引き起こしやすいので、血栓形成予防が必要になります。また、心房で発生する1分間に300~600回の電気信号のうち何割かが中継路である房室結節を通して心室に伝わりますが、心室への伝わり方も不規則なので脈もバラバラで極端に速く、あるいは遅くなり、動悸、胸部不快感、めまいなどの症状が出てくることもあります。

◇心房細動の原因と診断

心房細動は心電図で診断することができます。また、心房細動には一時的に発作の出る発作性心房細動と持続する慢性心房細動とがあります。発作性心房細動の診断や心拍数をみるためにはホルター心電図(24時間心電図)が有効です。また、心房細動の原因となりうる病気には、心臓弁膜症、心筋症、虚血性心臓病、高血圧、甲状腺機能亢進症などがあります。原因の診断には心臓超音波や甲状腺ホルモンの測定などが有用で、一度は受けておいたほうが良い検査です。また、心臓内の血栓の有無や今後血栓を作りやすい状態にないかを調べるためには、経食道心エコーが有用です。

◇心房細動の治療

心房細動の治療の主な原則は

  • 発作を治し、再発しないようにすること(リズムコントロール)
  • 心房細動であっても心拍数を正常に維持すること(レートコントロール)
  • 脳梗塞を予防すること

です。

心臓の刺激伝導系

発作性心房細動と慢性心房細動で治療に対する考え方が少し変わってきます。発作性心房細動の場合は、早めに発作を治し慢性化させないために、薬や直流通電によるリズムコントロールが行われます。また、最近では、発作を繰り返す患者さんで薬物治療がなかなか効かない場合に、カテーテルアブレーションという高周波で不整脈の原因となる部分を焼き切る治療が行われることもあります。一方、慢性心房細動の場合は、心房細動を正常のリズムに戻すことは困難なためレートコントロールのための薬物療法が主な治療です。脈が極端に遅い場合はペースメーカー治療が必要なこともあります。また、重要なことですが、発作性心房細動でも慢性心房細動でも同等に脳梗塞が起こりやすいことが報告されていますので、ほとんどの患者さんで脳梗塞予防のための抗凝固療法や抗血小板療法(血液をさらさらにする治療)が必要となります。

最後に繰り返しますが、心房細動は比較的頻度の高い不整脈で、ほとんどの場合、治療が必要になります。自覚症状のない方も多いと思いますが、内科、特に循環器科を受診することをお勧めします。

トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field