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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

骨粗鬆症

針生 光博 (山形県立日本海病院 整形外科医長)

針生光博(県立日本海病院整形外科医長)

骨粗鬆症は、骨量が減少し、骨がスカスカになり骨折の危険性が増加した状態で、原発性(閉経後、老人性など)と続発性(ステロイド剤服用など)に分類されます。骨量は30歳代後半をピークに自然に減少してきます。骨粗鬆症は男性で50歳代から発生するのに対し、女性は40歳代から発生、閉経後増加し、60歳代で約33%、80歳代で約60%の発生頻度となります。骨粗鬆症患者の8割は女性で、日本では約1000万人と考えられています。

骨は骨芽細胞と破骨細胞によって形成、吸収のバランスが保たれていますが、高齢女性では骨芽細胞活性を高めるエストロゲン生成が低下するため、閉経によって骨粗鬆症へと進みやすくなります。性ホルモン以外にも複数の要因が存在し複合的に関わっています。人種、体型、運動、喫煙、食事、アルコール摂取などが考えられています。骨形成に必要なカルシウム、ビタミンDが不足した食事、喫煙、アルコール摂取など長年の生活習慣が原因となることから、生活習慣病の一つと考えらます。

自覚症状は更年期を過ぎてから出現することが多く、腰背部痛など骨性の痛み、背中が曲がる骨変形、骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折など)などです。日常生活動作程度の負荷によって骨折を引き起こし、高齢者の寝たきりにつながり、QOL(quality of life : 生活の質)を著しく低下させます。寝たきりの原因の第3位が骨粗鬆症による骨折(第1位脳卒中、第2位老衰)ですので、高齢化社会が抱える大きな問題となっています。

診断は症状やレントゲン、超音波、CT検査による骨塩量測定などによって行われます。骨塩量が若年者の平均値(young‐adult mean)の70%未満を骨粗鬆症と診断します。続発性との鑑別のために血算、血清カルシウム、リン、アルカリホスファターゼなどが検査されますが、原発性では正常です。病態診断としては骨代謝マーカー(血清オステオカルシ、尿中デオキシピリジノリンなど)が測定され、モニターとして使用されます。

骨粗鬆症の予防、治療は、カルシウムの十分な摂取、運動、適度な日光浴が有効です。カルシウム必要量は600mg/日ですが、骨粗鬆症では800mg/日以上摂取する必要があります。牛乳、乳製品はカルシウムが腸から吸収されやすく、小魚などもカルシウムの多い食品です。良質のタンパク質やビタミンDを多く含む食品と一緒に摂取すると、吸収が良くなります。

アルコールやニコチンなどはカルシウム吸収を阻害し、骨量を低下させるので、注意が必要です。適度な運動は骨を刺激し、カルシウムが有効に使われ、骨量を増加させます。散歩やゲートボールなどの軽い運動を毎日継続することが重要です。筋力も増強され身のこなしが良くなるので、転倒予防にもつながります。カルシウム吸収に必要なビタミンDは紫外線を浴びることでつくられるので、日光浴も有効です。夏は木陰で30分、冬は1時間の日光浴で十分です。薬物療法としては、ビスフォスフォネート製剤、活性型ビタミンD製剤などが単独または2種類以上で服用されます。

いずれにせよ、骨粗鬆症に関し心配な点がある場合には、専門の医療機関を訪れて検査することが重要です。

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