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こんにちは元気だのー 医療:最近の話題

在宅医療について 急速に進む高齢化

本間 清和 (酒田地区医師会長)

本間清和氏の写真

日本人の平均寿命は急速に延び世界一の長寿国になりましたが、しかし、これが社会全体の大きな課題になってきました。

現在、わが国の死亡者数は年間108万人で、このうち8割の方が病院でみとられております。30年後には団塊世代が終末期を迎える頃になりますが、死亡者数は170万人に上り、病院は高齢者であふれ、病院本来の機能が危うくなりそうです。特に、北庄内では県立日本海病院と酒田市立酒田病院の統合再編でベッド数が減少し、また、老健施設や特老施設などの増床はこれ以上見込めない状況ですので、事態はさらに深刻です。

そんな中で国は、病院の機能を診療所とスムーズな連携をとって在宅医療(療養介護)を行う新しい地域医療の形態を考え始めました。

「可能なら、住みなれた自宅で療養介護をうけたい」、しかし、「介護する家族の負担が大きい」「医師や看護師がすぐ来てくれるか不安」「必要なとき病院にすぐ入院できるだろうか」、多くの皆さまが大きな不安を在宅医療に抱いております。いわゆる介護力と在宅医療のスタッフに関する不安です。

介護する家族の負担は大変なものです。精神的な負担に加え、介護のため退職・転職・休職される場合もあります。一方、独り暮らしや夫婦ふたりだけの家庭は高齢者の半数にも上り、もはや介護の問題は社会全体の深刻な問題になっております。

このような状況に対応したのが介護保険制度です。病状に応じて、入浴、排泄、食事、日常生活の世話、看護師の訪問、訪問リハビリ、施設デイサービス・短期入所などで介護を支援するしくみです。病状にもよりますが、これらのサービスで、独り暮らしの方でも自宅での療養介護が可能となり、また、家族の介護の負担も相当に軽減されました。

一方、コムスンなどの介護サービス事業所の体質が問題になっております。患者とその家族を本位とした介護サービス提供が守れる制度の確立が必要です。

在宅医療は「地域や自宅が病棟、看護師は訪問看護ステーション、病棟の主治医は地域のかかりつけ医」、このように地域全体を病院としてみることができます。

1.訪問看護師

在宅医療の中心になるのが訪問看護師です。訪問看護師は北庄内では5カ所の訪問看護ステーションに所属しております。酒田地区医師会では看護技術の標準化のため合同の勉強会や検討会を予定しております。

一方、訪問看護師は365日24時間対応で看護師の過重労働が問題になっており、早急な対策が必要です。

2.在宅診療医

ここ20年の間、全国の往診件数は増えておりません。積極的に往診される先生が増えていないのです。これまでの医師の教育カリキュラムに「在宅医療」が含まれていなかったことが背景にあります。

このような状況から日本医師会では在宅医療のセミナーを本年2月に開催しましたが、全国から会場いっぱいの開業医が参加しました。今後このような在宅医療の研修会や訪問看護師との連携が密になれば、在宅医療に携わる医師は確実に増えると思われます。地区医師会としても大きな課題として取り組んでいます。

医療が進歩したといっても、がん疾患の治癒率は約6割弱ですから、進行するがんの患者さんの医療と介護が大切なことは言うまでもありません。進行するがんの耐え難い主な症状は疼痛と呼吸困難です。近年、我が国では疼痛や呼吸困難に対する麻薬の治療法が進歩し、患者さんの苦痛を確実に軽減することができるようになりました。

また、疼痛に対する放射線治療は外来でも治療が可能で、効果が数週間も持続する非常に有効な治療法です。その上、在宅での酸素吸入も可能ですから、病院で行われる症状緩和医療が住みなれた自宅でも継続してできるようになりました。

酒田地区医師会では市民の方々を対象にした公開講座「在宅緩和医療」を9月に予定しております。多数のご参加をお願い申し上げます。

2007年7月24日 up

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