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こんにちは元気だのー 医療:最近の話題

消化器症状と緩和ケア

鈴木 義広 (県立日本海病院内科医長)

鈴木義広医師の写真

今回のシリーズでは緩和ケアについてさまざまな視点から紹介されてきましたが、ここでは消化器症状の緩和ケアについてお話しいたします。

まず、緩和ケアを必要とする病状や治療の過程において、消化器症状は必発といえます。消化器症状には、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、便秘、喉のつかえ感、腹痛、下痢などさまざまなものがあります。また、治療に使う薬の副作用などが複雑にかかわり合ってこれらの症状を形成しています。

胃や腸、肝臓、膵臓(すいぞう)などの消化器のがんの場合、直接消化器症状を引き起こしますが、消化器以外のがんの場合は疾患の進行により悪液質(注1)に陥り、あるいは治療に用いる抗がん剤や痛み止めなどによる副作用、さらには精神的な問題(病状を思い悩む結果として鬱(うつ)症状など)により消化器症状を起こすことが多いようです。

消化器症状は直接食事の摂取量に影響しますので、症状が長引けば栄養状態が悪化し生活の質(QOR)が低下するのみならず、治療中の薬物などの減量や中止を余儀なくされる場合がありますから速やかに対処する必要があります。

消化器症状に対する緩和ケアの方法は多彩で、症状に合わせた対症療法(吐き気に対して吐き気止め、腹痛に対して痛み止めなど)や、原因となっている疾患に対する抗がん剤などの原疾患に対する治療も含まれます。また、精神的な問題に対しては抗うつ剤などを用いることも多くあります。しかし、消化器症状に対して治療を行っても、症状が治まらず食事を続けるとかえって症状が悪化する場合もあります。その際には食事をいったん止めて点滴などで水分と栄養をとりながら、症状が軽くなるまでお腹を休めるのも一つの方法です。

一方、通常の点滴で症状が取れるのを待っても改善しないこともあります。その場合には高カロリー輸液=中心静脈栄養(注2)を行い栄養失調や脱水症に陥らないようにする必要があります。幸い口から食事がある程度取れるようになっても不十分な場合には、カロリーが高い経管栄養剤などを併せて取ることもあります。

緩和ケアの目的としては、症状を和らげることはもちろんのこと、自宅での療養を可能にするということが重要です。最近では前出の中心静脈栄養が自宅で実施可能になってきました。すなわち、食事が取れなくても点滴で自宅療養が可能です。

さまざまな緩和ケアを行っても、必ずしもすぐに症状が取れない場合もあります。そのため、中にはあきらめてしまって症状が取れていないことをあまり訴えず、ひたすら我慢している方も見受けられます。以前の医療では我慢を強いてきたことがありましたが、これは誤りです。我慢をせずに苦痛を率直に訴えることが緩和医療のスタートラインです。自分の思っていることを話したり、またアドバイスを受けたりすることで、精神的な不安が解消され、症状の改善につながることが少なくありません。もし吐き気、食欲不振、腹部膨満感、便秘、喉のつかえ感、腹痛、下痢などの消化器症状、また不安があれば遠慮せず担当の医師や医療相談室に気軽にご相談ください。

注1
悪性腫瘍(しゅよう)や慢性心不全などの慢性疾患において、重度の栄養不足のため全身状態が極めて不良な状態。
注2
エネルギー源として高濃度ブドウ糖液を用い、アミノ酸、ビタミン、電解質のほか、人体に必要な全ての栄養素を含む輸液剤を、上大静脈に留置したカテーテルを通じて投与する方法。

2007年11月20日 up

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