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こんにちは元気だのー 医療:最近の話題

緩和ケアと地域連携

坂井 庸祐 (県立日本海病院外科医長)

坂井庸祐医師の写真

日本海病院では、入院中の緩和ケアは緩和ケアチームを中心にして実施しております。在宅治療を希望された患者さんの場合には、退院後に在宅で緩和ケアを継続していく必要があります。このときには地域の他の医療施設、かかりつけ医、看護ステーション、医療のマネージメントを担当するケアマネージャーの方々の協力なしで緩和ケアの継続はできません。

在宅での緩和ケアに重要なのは家族の理解と協力です。癌末期の療養場所についての世論調査によれば、患者さんの約60%が在宅での療養を希望するとのことです。諸事情により、死を迎えるころには入院するとしても、その前に治療が在宅で継続できれば、敢えて入院を望む患者さんが少なくなるのは当然と思われます。ましてや癌の末期であれば、できるだけ家族とともに過ごせる時間を共有したいと希望されることでしょう。この希望をかなえるためには、病院外すなわち在宅での緩和ケアが、継続的にしかも確実に実施されなければなりません。すなわち、病院と地域との連携が重要な課題となります。

具体的に課題となるのは
  1. 患者さんと家族が病院外での治療に同意をする。
  2. 治療可能な医療施設がある。
の2点が挙げられます。

最初の課題をクリアするためには、安心のできる地域連携のネットワーク体制がなければなりません。24時間いつでも連絡、相談、往診ができること、適切な緩和ケアが提供される体制であることが前提となります。

この体制の構築には、地域における緩和ケアの重要性を医療従事者はじめ地域住民の方々も認識すること、また緩和ケアの知識をお互いに共有する必要があります。このためには病院の内外を問わず、緩和ケアについて医療施設間、施設毎の勉強会が、また医療従事者のみならず地域住民の方々を対象とし緩和ケアについての講演会、学習会が効果的でしょう。

さらに、在宅での治療を継続するために最も大切なことは受け入れる家族の方々の病気に対する理解と、ご家族の精神的、肉体的、経済的な負担に対するバックアップです。これには医療者側からの十分な説明と、継続したコミュニケーションの確立が重要です。

2番目の課題については、在宅で緩和医療を実施している医療機関が少ないのが実情です。しかし、日本の医療政策は在宅医療を重視してきており、かかりつけ医の先生を中心に、次第に在宅緩和医療が充実していくものと思われます。“最後まで看取ってもらえるかかりつけの先生”の存在と必要性は、緩和ケアの必要性からもさらに重要となっています。

山梨県で在宅訪問ケアをする内藤いずみ先生は
“緩和ケアを学ぶことは、多岐にわたる医療の形のなかで、本質(医の心)にふれ、私たちを人間として成長させてくれる学びのひとつである。困難なことに出会った時こそ、その苦しみを味わい、乗り越えていく過程が私たちの人生に厚みを与え、幸せを自覚する力をつくる。そして、そのことが限りある命を生きる患者さんたちの体、心、魂の苦しみに、少しでも寄り添うことにつながる。連携する力は、その基本であり学びの始まりである。” と我々に教唆しています。地域連携が学びの始まりならば、私は一人でも多くの患者さんの希望をかなえるべく、地域連携を実践していこうと考えています。

2007年12月11日 up

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