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「魚市場旬だより」特別編 脂が乗り鮮度も最高、庄内のハタハタ!

7、8月の2カ月、庄内浜で禁漁となっていた底引き網漁が9月に再開され、おいしいハタハタが水揚げされています。待っていた人も多いのではないでしょうか。9月上旬は小型のものが中心でしたが、徐々に大型が増えてきました。脂が乗り、ハタハタは今が年間を通して最もおいしい時期です。

ハタハタの田楽の写真

ハタハタは近年、夏の間でも石川県や新潟県、北海道などから入荷し、庄内でも年間を通して食べられるようになりました。ハタハタは漢字で「鰰」と書きます。雷魚とも言われ、魚編に雷と書く場合もあるそうです。「波多波多」というのが語源のようです。荒波が押し寄せる冬の日本海の様子を如実に表しているように感じました。

昔は大量に捕れたので、家庭でも箱単位で買って一部を加工しておき、冬の間中、食べていた食材でした。しかし、1980年代に漁獲量が激減して価格が高騰、高級魚に転じました。お隣の秋田県では92年から95年まで全面禁漁の措置を取りました。卵からのふ化事業や放流事業にも取り組み、そのような対策が一定の成果を上げ、水揚げ量の回復につながりました。酒田市の北港に12月、産卵のためにハタハタの大群が来るようになったことは皆さんもご存じでしょう。

ハタハタのカラムールの写真

意外に思うかもしれませんが、ハタハタは水深500メートルほどの所にすむ深海魚です。昼間は砂に潜り、目や背びれだけを水中に出していて夜に移動します。うろこが全くなく、小骨も抜けやすいので、煮たり焼いたりと、1匹丸ごと料理することが多いのです。料理がしやすいというのも家庭にハタハタが普及した理由の一つかもしれません。冬場の貴重なタンパク源で、田楽や湯あげ、干物などいろんな料理、保存法がありました。昔はハタハタの卵、つまりブリ子だけを売っていたそうです。年配の魚屋さんの中には「ガムのようにブリ子をかんで、中のエキスを味わい、残りを捨てたものだ」と話す人もいました。

12月9日の「大黒様」を過ぎ、年が明けるとハタハタは脂が抜けてしまいます。そうなったら、秋田の郷土料理であるハタハタずしにするのがいいでしょう。ハタハタずしは、米麹を使って発酵させた飯寿司(いずし)の一種です。ハタハタを塩漬けにしてしょっつるという魚醤(ぎょしょう)にして食べる文化も秋田にはあります。三五八(さごはち)漬けというのは、塩と米麹、米の配合量がそのまま名前になった料理で、ハタハタを丸ごとつけ込むのだそうです。

ハタハタは春にも庄内でも捕れますが、そのころは鳥取や兵庫など山陰方面のものがおいしいのです。なぜかと言うと、えさの関係です。ハタハタがホタルイカとコアミなどを食べておいしくなるのです。では庄内ではいつごろからおいしいハタハタが捕れだすのでしょう。答えは6月ぐらいからで、やはりホタルイカが影響しています。そのころに水揚げされたハタハタのおなかを開くと、ホタルイカが残っているときがあるのだそうです。魚はおいしいえさを食べている時期がおいしく、おなかに子を持つとあまり餌を食べなくなるのです。

生と湯引きのハタハタを使ったにぎりずしと白子、ブリコの軍艦巻きの写真

荘内日報の読者から以前、質問が来たように、ハタハタは近年、にぎりずしなど生でも食べるようになってきました。ハタハタは、白身魚に分類されるので、刺し身や生ずしにするには脂が乗っていないとおいしくありません。同時に鮮度も求められます。この2つのハードルをクリアしないと生食は難しいと思います。ハタハタの体を触ったとき、ざらざらするのは鮮度が落ちている証拠です。生きのよいものは表面がつるつるしています。国内にはコハダのように酢締めにして、すし種にしていた地域もあるようです。

最近は一部のすし屋さんで生のまま握るようになってきました。庄内ではハタハタの大半が底引き網漁で水揚げされます。捕ってすぐ船上で箱詰めするものを「沖詰め」、港に戻ってから詰めるものを「丘詰め」と呼びます。市場で競りにかけられるときは沖詰めと丘詰めで区別します。沖詰めの方が鮮度がよく、高値で取引されます。新鮮でも刺し身にするにはあまりいい状態ではないものは皮もむきにくいはずです。ハタハタにはうろこがないので、キスより処理が楽なように思えますが、皮をひくのが難しく、刺し身にするのはキスより手間がかかるそうです。流通の面からもハタハタの生食が普及する環境が整ってきたと言えるかもしれません。

ハタハタのポアレの写真

ハタハタはブリコだけでなく白子もおいしいのです。料理研究家には「マダラの白子よりクリーミーで上品」と高く評価する人もいるそうです。白子はホイル焼きにして食べるのがおいしいようです。

 

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店・手塚太一社長談)

写真で紹介したお料理などは「敬天愛人10月号」に詳しく掲載されています。

 

(「敬天愛人」 2009年10月号より)

 
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