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荘内日報ニュース


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2009年(平成21年) 9月30日(水)付紙面より

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庄内浜のあば 悲哀と快活と歴史と ―27―

高齢者には欠かせぬ存在

早朝に流れる演歌

 午前6時40分、田園地帯の三川町東沼の路地を走る軽トラックから、歌手・氷川きよしの演歌がにぎやかに流れる。車が家の前に止まると、間もなく主婦らがトラックの前に集まってきて保冷式になっている荷台をのぞく。足が弱くなったおばあさんも、台車につかまりながらやって来た。

 荷台の三方のカバーを開けると、その中はミニスーパーに早変わりする。保冷車を使っての行商は、店舗を構えた鮮魚商と同じ扱いで、県の「食品営業許可」が必要だ。

 道路が整備され、車があればどこにでも買い物に行ける時代だが、半面、高齢化が進んで交通手段を持たないお年寄りにとって、「戸口販売」の移動販売車は、日々の暮らしに欠かせない存在だ。

 鶴岡市宮沢の相馬寿子さん(64)は、自動車での行商を始めて44年。保冷車の中には、生きているタコやタラバガニなどの魚介類だけでなく、牛乳、納豆、豆腐、コンニャク、油揚げ、野菜などと、実に多彩な生鮮食品が並ぶ。頼まれて買ってきた食品もあり、時には生け花用の花も。移動販売は時に便利屋も兼ねることに、相馬さんは「皆に助けらいでいっさげ、こうやって働いでいることができる。頼まれたことは何でも」と話す。

信頼関係に喜び

 三川町東沼の堀井ケイ子さん(79)は、「普段の(食事の)支度で要るものは何でもそろうし、ちんとばし(少しばかり)でも買えるから大助かりだ」と話す。相馬さんが休みの土曜、日曜は家族の車で10分足らずの大型スーパーに出掛けるが、広いスーパーは勝手が違って戸惑う。

 車の演歌を聞いて、野良着に長靴姿の主婦が小走りでやって来た。仕事の最中で財布を持っていなかったのだろう、「100円貸しておいて」といって、豆腐を受け取り急いで戻って行った。

 農繁期の農家は、ゆっくりご飯を食べている時間がないほど忙しい。だから演歌を聞き、仕事の手を休めて大急ぎで走ってくる主婦もいる。そんな事情を相馬さんはよく知っている。「皆顔見知りだから(帳面に貸しを)付けたことはないよ。頭に付けるから。買った方だって絶対忘れない。この仕事のいいとこだ」。相馬さんの言葉から、長年で培われた信頼関係と、この仕事をしていることの喜びが伝わってくる。

仕事が元気の源

 相馬さんは、JR鶴岡駅近くの田川地方行商協同組合で魚類を仕入れ、午前6時半に組合を出て商売し、10時前には店仕舞いする。途中、つまみ食い程度の朝食を取る。53歳の時の大病で気力も食欲も落ちたが、半年後に復帰したらすっかり体調が良くなった。

 「何としても復帰しようとの気持ちがあったし…。毎日顔を合わせている皆と話すのが一番の健康法です」

 市場での仕入れ時、ひときわ元気な声を出しているのが相馬さんだ。少々荒っぽい言葉も飛び出すが、なぜか市場の雰囲気に合っている。まさに快活な浜のあばそのものだ。

 高齢者にとって移動販売車による行商は無くてはならない存在。「辞めらいね」が、相馬さんの口ぐせだ。

(論説委員・粕谷昭二)

農村地帯の路地で店開きする相馬さん(左)。小さな台車を頼りにおばあさんがやって来た(三川町で)(左) 「ほれ、このカニだば生ぎいいぜ」と、客に語り掛ける相馬さん(三川町で)
農村地帯の路地で店開きする相馬さん(左)。小さな台車を頼りにおばあさんがやって来た(三川町で)(左) 「ほれ、このカニだば生ぎいいぜ」と、客に語り掛ける相馬さん(三川町で)


2009年(平成21年) 9月30日(水)付紙面より

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五穀豊穣に感謝 庄内たがわ農協 献上米を刈り取り

 庄内たがわ農協(黒井徳夫組合長)の抜穂祭(ぬきほさい)が28日、羽黒山の入り口となる鶴岡市羽黒町玉川の大鳥居そばの献饌田(けんせんでん)で行われ、出羽三山神社に奉納する献上米を刈り取った。

 稲作と信仰の結びつきが深い歴史を踏まえ、温暖化の影響とみられる異状気象など災害のない米作りと五穀豊穣(ほうじょう)に願いを込めようと2007年から毎年、5月に田植えとなる御田植祭、9月に抜穂祭を行っている。

 この日は農協職員や生産組合代表、神社関係者ら約50人が参列。黒井組合長のあいさつなどに続き神事が行われ、祝詞奏上や巫女(みこ)舞などを繰り広げた。その後、黒井組合長や巫女らがかまを持って一部を手刈り。刈った稲はくい掛けにした。

 同農協によると、今年は梅雨明けがないなど天候不順による稲作の影響が心配されたが、作柄は平年並みの見込み。ただ、稲刈りの時期は例年より遅れていることから、献饌田も後日あらためて収穫する。収穫した米は勤労感謝の日(11月23日)から同神社の神饌として祭事などで使われる。

出羽三山神社の巫女らが手刈りし、五穀豊穣に感謝した
出羽三山神社の巫女らが手刈りし、五穀豊穣に感謝した


2009年(平成21年) 9月30日(水)付紙面より

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「おいしい」と高評価 JA庄内みどり 飲食店主ら新米を試食

 庄内みどり農協(阿部茂昭組合長)の2009年産新米試食会が28日、酒田市曙町一丁目の同農協本所で開かれた。はえぬき、ひとめぼれ、ササニシキの3品種を賞味。いずれも新米特有のつやがあり、「ずばりおいしい」など高く評価された。

 同農協が経営する産地精米の専門店「こめ蔵」(同市山居町一丁目)からコメを仕入れている庄内全域の飲食施設(食堂、すし店、料亭、和・洋・中華料理店、旅館など)、同市、全農、コメの運送業者ら関係者を招いてその年の新米を試食してもらい、感想を聞いている。

 この日は約40人が参加。阿部組合長が「今年は日照不足、低温続きで生産者は苦労したのでは。ただ、じっくり、ゆっくり実入りしたので、品質は申し分ないと思う。試食で確かめてほしい」とあいさつした。

 同農協営農販売部が本年産米の生育・作柄概況を報告。9月から天候に恵まれて生育の遅れを取り戻し、稲刈り時期はほぼ平年並みになったことや、作況は大豊作だった昨年から10アールあたり半俵(30キロ)ほど落ち込む見込みだが、「品質が良く透明感の高いコメができた」と述べた。

 続く試食では、おにぎりにした新米3品種を食べ比べ、つや、香り、味を採点した。参加者からは、「どれもつやが良く、ずばりおいしい。不順な天候の中、生産農家の技術レベルの高さに敬意を表する」「すごくきれいで、おいしい」といった声が出た。

 さかた海鮮市場2階の飲食店「海鮮どんや・とびしま」の高橋力社長は「商売柄、酢飯を多く使うが、それにはササニシキが合う。今年のササはすごく甘みがあっておいしい。夏場(の書き入れ時)に品切れにならないよう、お願いしたい」と話していた。

飲食店主らが新米を試食し出来を確かめた
飲食店主らが新米を試食し出来を確かめた



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