2020年(令和2年) 9月10日(木)付紙面より
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鶴岡市の羽黒山、月山の麓の2地区で計40基程度の大型風車による大規模な風力発電事業を計画する前田建設工業(東京都千代田区、前田操治社長)は9日、環境影響評価法に関する手続きを廃止し、計画を白紙撤回すると発表した。出羽三山の山岳信仰の地での事業計画に対し、計画地の地元住民らから景観や自然環境の改変への懸念が表明され、建設の中止を求める声が上がっていた。同社は「地域の反対意見を受け、白紙撤回を判断した」と説明した。
同社は7日から8日にかけ、鶴岡市や計画地の自治組織の代表らに「反対署名活動も始まっている中で計画を進めることは難しい。白紙撤回する」と連絡した。7日の社内会議で最終判断したという。荘内日報の取材に同社広報部は「地域の方々からの反対意見などを受け、社内で審議した結果、計画を白紙撤回する方向にした。景観への配慮や神聖な山ということを踏まえ、さまざまな声を基に総合的に判断した」と話した。
地元山伏や学識者、自然保護団体など有志で先月末に結成した「出羽三山の風車建設に反対する会」は、計画の撤回・中止を求める署名活動を進めていた。9日午前、同市いでは文化記念館で記者会見した、同会の呼び掛け人で共同代表の星野博羽黒町観光協会長は「出羽三山の伝統と歴史、山岳信仰の場所を守ることができ、喜ばしいこと。協力いただいた皆さんに感謝したい。二度とこうしたことがないよう、県や市に何らかの規制など対応を求めたい」と語った。
反対署名活動など「市民の間に混乱が生じている」として、計画推進への懸念とともに、計画自体を取り下げるべきとの考えを示していた鶴岡市の皆川治市長は9日、「多くの皆さんの思いが届き、出羽三山エリアには大規模風車を建設すべきでないと判断したのではないか。今後、市の風力発電施設設置に関するガイドラインについて専門家の声や先進地の事例を研究し、改定作業を進める必要がある」と述べた。今回の計画地が県が示した「適地」を含む点については、「県と協議し必要な見直しをお願いしたい」とした。
同社は 1藤島地域の添川地区を中心に一部庄内町三ケ沢にかかる区域 2櫛引地域たらのき代を中心に羽黒地域川代地区を含む区域―の2地区合わせて2296ヘクタールで、県内最大規模となる計40基程度の風力発電事業を計画。事業実施に向け8月7日に始まった環境影響評価の第1段階となる計画段階環境配慮書の縦覧や、先月下旬からの地元説明会で計画概要が公表され、「山岳信仰の地としての出羽三山にそぐわない」など計画の撤回・中止を求める反対の動きが広まっていた。