2021年(令和3年) 4月11日(日)付紙面より
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鶴岡市湯田川のJA鶴岡湯田川催芽場で、温泉の湯を使った稲の芽出し作業が最盛期を迎えている。庄内一円と新潟県・山北地区の農家から運び込まれた種もみを湯に浸して発芽を促す。江戸末期から続く伝統の春作業だ。
温泉の廃湯を活用した発芽法は、1848(嘉永元)年に地元の大井多右衛門が考案し普及させたと伝わる。8キロほどの種もみを入れた袋を30―32度の湯に12時間浸した後、廃湯水路の上に敷いた枕木に袋を並べてむしろで覆い、さらに12時間蒸して発芽を促進させるもの。
専用機器を使った芽出しに比べコストが安く、しかも発芽が均一になり苗作りが楽になるといったメリットがあり、今季も約1000戸の農家から、つや姫、はえぬき、雪若丸、ひとめぼれ、あきたこまちなどの品種が240トン近く運び込まれる。
作業は今月1日に始まり、今がピークで催芽場は種もみの袋でいっぱい。作業員は早朝5時から交代制で一日26トン前後の漬け込みに追われている。9日午後は15人が作業に当たり、流れ作業で次々と種もみの袋を漬けていた。催芽場の周囲では桜が満開で、梅とコブシも咲きそろう。
担当の丸山健さん(55)は「今年は桜の開花が早く、芽出しの最盛期の作業を満開の桜の下でするのは珍しい。気温と湯温のバランスを見ながらの作業です」と話していた。湯田川温泉の芽出し作業は今月下旬まで続く。