2021年(令和3年) 5月4日(火)付紙面より
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山大農学部(鶴岡市若葉町)の佐藤智准教授=専門分野・動物生態学=が、タニシ(準絶滅危惧種)を活用した稲の環境保全型農法について研究している。実験を進めてきた結果、タニシが田んぼ全体の環境を良くし、稲の生育と収量を約10%向上させることが分かった。
タニシは川や湖、田んぼなどの淡水にすむ巻き貝。アジアに多く見られ、日本では「マルタニシ」「ヒメタニシ」「オオタニシ」「ナガタニシ」と呼ばれる4種類がいる。1960年代ごろまでは食用としても親しまれていたという。魚のふんなどを食べ浄化の役割も果たしているが、農薬や開発で生息数は激減している。「要注意外来種」に指定されているスクミリンゴカイ(ジャンボタニシ)は、色や形は似ていても別の貝類に分類される。
佐藤准教授は、かつて田んぼにたくさんいたタニシに着目。水稲への影響や保全の在り方について探ろうと、10年前に学生たちと研究を始めた。鶴岡市朝日地域のほか、循環型の自然農法を行っているインドネシアの農村部などで調査・研究を進めている。
鶴岡市高坂にある山大農学部の水田(8ヘクタール)で、タニシを1000個放した場合と、そうでない場合との違いを調べたところ、タニシの大量のふんのほかに粘液を出して動き回ることが稲の生育を促し、収量アップにつながることを確認した。タニシがいることによってミジンコや藻類が増え、それを食べる昆虫が集まりだすなど、田んぼの中で食物連鎖が生まれることも分かった。
佐藤准教授は「タニシは環境保全型農法の主役になれる存在。有機米としての付加価値が出るし、今では準絶滅危惧種となったタニシの保全にもつながる。今後も継続して研究を進めていきたい」と話している。