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2023年(令和5年) 11月12日(日)付紙面より

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考 国の財源は青天井ではない

 「金は天から降ってくる」はずもなく、「泉のように湧き出る」ものでもない。国の予算は「国民の血税」で賄われる。ところが、国民に金を配るのが政治家の仕事―とでも勘違いしているような大盤振る舞いである。岸田文雄首相が打ち出した経済対策の予算規模は13兆円余になる。

 2022年度の税収が伸びた。「30年ぶりの明るい兆し。税収増分を物価高に苦しむ国民に減税や定額給付で還元し、賃上げにつなげる」というが、多くを国債に頼る。低所得者層への支援は必要だが、高所得者層まで一律とはどうだろうか。

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 3月末の国債や借入金を合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は約1270兆円。国民1人当たりの換算で1000万円を超し、23年度予算114兆円余の11年分に当たる。

 家庭なら「入るを量りて出ずるを為す」のように、収入に見合った支出をし、借金をしないで家計を維持しようとする。還元は金が余っているので返すもの。しかし政府は「屋上屋を架す」ごとく、借金を積み重ねることをいとわない。税収増分を還元すれば財政赤字は減らず、将来世代が苦しむことになる。

 新潟県長岡市に「米百俵」の逸話が残る。北越戊辰戦争に敗れた長岡藩は食料に窮した。他藩からの見舞いの米百俵を、藩は「食べてしまえばなくなる。教育こそが地域を繁栄させ、人々の生活をよくする」と、米を売って学校設立資金の一部に充てた。金や物は後世に生きる使い方をしなければならない。

 ばらまきのはしりは「ふるさと創生一億円事業」。竹下登内閣が「自ら考える地域づくり事業を」と、全市区町村に使い道自由の1億円を配った。しかし成功例はまれで、意味のない無駄遣いで終わったケースが多い。

 西郷隆盛は「南洲翁遺訓」で、「会計出納は国家制度の基礎。時勢にまかせてルーズに会計を運用しては、結局は国民の重税につながり、国力は疲弊する」と述べている。

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 物価高が収束しない。暮らしが楽でない高齢者世帯、単身での子育て世帯などへの支援は要る。給付金について街では「助かる」「すぐなくなる額」「この政策では将来がより不安になる」―などとの声が聞かれる。

 経済対策は負の財政を生み、今の子どもが大人になってから支払うことになる。そんな政策では子どもの将来が不安になり、若い世代が子どもを産み育てる気持ちになれるだろうか。

 選挙対策とも語られる「我田引水」的な経済対策である。将来世代に負担を付け回しするのは心苦しいという心を、為政者は持ち合わせていないようだ。

論説委員 粕谷 昭二



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