2024年(令和6年) 1月11日(木)付紙面より
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伝統ある酒田凧(だこ)を後世に残す活動を行っている「酒田凧保存会」の会長を長く歴任し、現在も顧問として凧作りを指導する松田正美さん(93)=酒田市東栄町=の作品を集めた展示会が、同市日吉町二丁目の山王くらぶで開かれ、新春を祝う色鮮やかな凧が来館者の目を楽しませている。
1970年代に市内の旧家から見つかった凧の下絵集には「万延元年」「慶応元年」の表記があったことから、酒田凧の歴史は江戸時代末期までさかのぼるとされ、明治期には主として左官職人が仕事の減る冬場に壁塗りの骨組みに使う竹で凧を制作し卸していたという。
下絵集が見つかったことを受け伝統ある酒田凧を残していこうと75年、有志が集まって保存会を設立。松田さんはじめ会員らは酒田凧を制作する傍ら、市内のイベントで子どもたちに凧作りの楽しさを教えるなど、後世に引き継ぐ取り組みを続けている。
酒田凧は庄内地方に吹く強い西風でも壊れないよう作りが丈夫に工夫されており、大胆で力強い絵柄が特徴。凧の絵柄は大阪から北前船で運ばれてきたと考えられている。
今回の展示では、酒田凧特有の文様である人物の全身が描かれた「人凧」や「頭出しやっこ凧」のほか、色鮮やかに描かれた「武者凧」「だるま凧」など大小計約50点が大広間に並ぶ。
中でも「文人墨客の間」に飾られた松田さんが20年以上前に制作したという「亀凧」は、一畳ほどの大きな凧に立派なカメが描かれ、その迫力から来館者の目を引いていた。松田さんは「揚がった時の楽しさを子どもたちにも伝えたい。見た人に興味を持ってもらえたら」と話す。展示は28日(日)まで(3月までは毎週火曜休館)。