2024年(令和6年) 2月28日(水)付紙面より
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県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室(酒田市浜中)は、庄内砂丘メロンの多収栽培技術を確立した。1株から5玉(通常は4玉)を収穫する方法で、生産農家の収益を上げることが狙い。これまで緑肉の「アンデス5号」、赤肉の「レノンウエーブ」と「ルピアレッド」の3品種の多収技術を確かめた。現在は庄内砂丘メロンの主力品種「アンデス1号」(アンデスメロン)の試験栽培に取り組んでいる。
多収栽培は、通常より葉の数を増やし光合成を促して果実の実りを良くする方法。1株当たり1玉分多く生産し、10アール当たりの平均収量を約2・2トンから約2・5トンに増やすことを目的とする。多収栽培経営収支例(10アール当たり)の売り上げでは約100万円の4玉収穫に対して5玉収穫は25万円増の約125万円を見込む。これまでの試験栽培では玉の形や大きさ、食味といった品質は通常と変わらないことが立証された。
産地研究室では昨年、庄内砂丘地の慣行品種で食味が優れる主力「アンデス1号」のハウスでの試験栽培を始めた。3品種の多収栽培を改良した方法で行い、品質の高いメロンが5玉収穫できる好結果を得た。今年はハウス栽培と並行して露地栽培に取り組む。
庄内砂丘地域のメロン農家は約700戸。稲作と同じ高齢化と担い手不足が深刻化している。さらに昨今の肥料や農業資材の高騰が追い打ちをかけ「メロン作りを縮小したい」と胸の内を明かす高齢農家も出ている。
産地研究室の板垣健太朗開発研究専門員(47)は「多収技術を分かりやすく言えば1株当たり通常60枚の葉っぱの数を80枚に増やし、光合成ができる面積を拡大する方法。着果、摘葉(てきよう)、整枝(せいし)を改良することで全体の収量アップが図られる。緑肉品種の半分を占める『アンデス1号』の多収技術を確立すれば農家に還元できるメリットは大きい」と話す。将来的には栽培農家での試験栽培を経て通常出荷と同じ流通ベースに乗せることが当面の目標だ。