2024年(令和6年) 2月29日(木)付紙面より
ツイート
庄内地域のクロマツ林でマツノマダラカミキリ(松くい虫)による被害が広がっており、2023年は鶴岡、酒田、遊佐3市町の国有林・民有林計5万5644立方メートル(材積換算、前年2万2976立方メートル)に及び、過去最悪になったことが分かった。27日に遊佐町議場で開かれた「庄内海岸林松くい虫被害対策強化プロジェクト会議」で示されたもので、「感染源」となる被害木を全て伐倒できなかったことに加え、夏季の高温・少雨による樹勢の衰えが主因。伐倒駆除、消毒液散布、抵抗性クロマツ植林といった対策を講じるが、予算・人員とも限られており、被害をくい止めることができるか不透明な状況だ。
松枯れの原因となるのは体長1ミリほどのマツノザイセンチュウ。この虫を媒介するのが松くい虫で、松から松へと飛び回って樹皮を食べる。この際にセンチュウが木の中に入り込むことで木が衰弱し枯れてしまうという。同会議事務局の県庄内総合支庁森林整備課によると、2002年の大発生時は的確な防除で翌年以降は被害が収まり、11年には3市町計2322立方メートルまで減少したが、12年4月に発生した爆弾低気圧による枝折れ被害、夏季の高温・少雨で樹勢が低下し再び増加に転じ、16年には計3万1228立方メートルに広がった。
県が実施した23年の民有林調査は計3万7820立方メートル、庄内森林管理署による国有林調査では計1万7824立方メートルでそれぞれ確認され、これまでで最も被害が広がった16年を大幅に超えた。市町別では、鶴岡市が7141立方メートル(前年3086立方メートル)、酒田市が3万5031立方メートル(同1万4303立方メートル)、遊佐町が1万3471立方メートル(同5587立方メートル)。事務局によると、夏季の記録的な高温・少雨、被害木の切り残しが影響したという。
この日の会合にはプロジェクト会議を構成する県庄内総合支庁と3市町、庄内森林管理署、森林組合、自然保護団体などから計約30人が出席。24年度の被害対策計画について駆除事業は4月初旬から処理作業ができるよう発注準備をし、羽化脱出時期の6月上旬までに終える。予防事業では適期の消毒液空中・地上散布を行うほか、北庄内森林組合などで生産が進む抵抗性クロマツを植林する方針。
協議に先立ちオブザーバーを務める森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所の中村克典産学官民連携推進調整監が「松くい虫被害対策における戦略的防除の必要性・重要性」と題してオンライン講義。全量駆除はできる見込みが低いことを前提に「優先順位に従った駆除の実施が必須」と指摘。「守りたい松林」を隔離するために一部をあらかじめ除去することの必要性を説き、「『守るために捨てる』という覚悟がないと戦略的防除は成り立たない」と強調した。