2024年(令和6年) 4月12日(金)付紙面より
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大型クルーズ船が地域の観光振興に果たす役割が注目される中、本県唯一の重要港湾・国際貿易港である酒田市の酒田港古湊埠頭(ふとう)に10、11の両日、外国船が相次いで寄港。好天にも恵まれ、酒田・鶴岡両市を中心に外国人観光客でにぎわい、街の活性化に一役も二役も買っている。
豪華リゾートホテルのような船内で各種サービスを満喫しながら夜に港から港へと移動し、日中は寄港地で下船、各地の特色ある観光を楽しむ船旅。クルーズ人口増の波を地域活性化に生かそうと2016年、酒田港の利用促進を図る官民連携組織“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会に「外航クルーズ船誘致部会」を設置し、積極的な招致活動を開始。さらに国土交通省酒田港湾事務所は寄港地の古湊埠頭に設備更新の一環として係船柱や防舷材を整備した。これらの活動が実を結び17年8月、同港に初めて外航クルーズ船のコスタ・ネオロマンチカ(イタリア船籍、乗客定員1800人)が寄港した。
一方、酒田市はクルーズ船を含め国内外の観光客の受け入れ体制を整えようと17年2月、官民の「酒田交流おもてなし市民会議」を設立。県や関係機関が連携して埠頭や市街地などでクルーズ船の乗客らをもてなしており、乗客から高い評価を得ている。
コロナ禍の影響で19年9月以降、3年半ほど途絶えたが、コロナ対策緩和に伴って昨年4月に再開。同年は客船クラスが「ラグジュアリー」と寄港した中で最も上位に位置づけられるシルバー・ミューズ(バハマ船籍、同596人)が2回、ダイヤモンド・プリンセス(英国船籍、同2706人)が3回、ル・ソレアル(仏国船籍、同264人)が1回訪れた。
今月は初寄港となったウエステルダム(オランダ船籍、乗客定員1964人)を皮切りに4隻が予定されており、10日は「ぐるり本州一周クルーズ11日間」と銘打ちダイヤモンド・プリンセス、11日は「Expedition To The Kitamae Route=北前航路をたどる旅」でル・ソレアルがそれぞれ寄港。両日とも天候に恵まれ、大勢の外国人観光客が山居倉庫、羽黒山はじめ酒田、鶴岡両市の観光地を巡るオプショナルツアーに参加したり、街中を散策するなどした。
このうち酒田市の本間美術館(田中章夫館長)は市内観光のオプショナルツアーに組み込まれ、バスが到着するたびに大勢の外国人観光客が降り立った。10日午後は美術展覧会場(新館)、清遠閣で作品を鑑賞した後、国指定名勝「本間氏別邸庭園『鶴舞園』」を散策。田中館長はじめ同美術館学芸員、酒田ガイド協会員らの案内で、遠く望む鳥海山を「借景」とする日本の美に触れていた。トルコから訪れた夫婦は「ここから見える山(鳥海山)、草木の配置が美しい」と盛んにカメラのシャッターを切っていた。
22日(月)にはウエステルダムが再度寄港するほか、来月2日(木)には商船三井クルーズ(東京都)のにっぽん丸(乗客定員524人)も訪れる。