2024年(令和6年) 5月7日(火)付紙面より
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酒田市田沢地区の薬師神社本殿から胎蔵山(729メートル)山頂の同神社「奥の院」まで、御神体の薬師如来像(混合銅製、高さ約40センチ、重さ約16キロ)を背負って運び上げる「御神体背負い上げ」が3日、胎蔵山で行われ、参加者が一年の健康などを祈りながら山頂を目指した。
胎蔵山は約1200年前に弘法大師が開山し、古くから山岳信仰の山として親しまれてきた。昔は山頂に神社本殿があり、中に黄金色に輝く薬師如来像を御神体として安置していたが、100年以上前に盗難事件が発生。新しい御神体を作る際に「地元民の目が届くところに」と、麓の八森集落に本殿を移築。山頂の旧本殿を「奥の院」として、年に一度御神体を山頂まで運ぶ神事が行われるようになったという。地域活性化に取り組んでいる「胎蔵ロマン会」(岩間政幸会長)が毎年協力し、広く参加者を募り実施している。
この日は快晴に恵まれ、会員含め県内外から約30人が参加。午前7時に同神社本殿で祈祷(きとう)した後、今年当番となった2番組の岩間修組長が御神体を神社から下ろし、2キロほど離れた胎蔵山登山口まで車で移動した。
一行は時折爽やかな風が吹く穏やかな天候の中、背負子(しょいこ)と合わせて約20キロにもなる御神体を代わる代わる背負い、チゴユリ、カタバミ、スミレなどが咲き新緑が生い茂る登山道を進んだ。
道中、鳥居松や中の宮で休憩を取りながら午前11時ごろ、「奥の院」に到着。1年ぶりに鎮座した御神体に、参加者や集まった登山客らは恭しく手を合わせ、無病息災などを祈願した。
娘、友人家族と共に参加した小松ゆいさん(44)=同市亀ケ崎二丁目=は「神様と共に上がれるのは普段はできない体験と思い参加した。子どもたちが幅広い年代の人たちとも交流できて、良い経験になった」と。娘のあんさん(7)=亀ケ崎小2年=は「重たかったけど持って歩くことができてうれしかった。急な坂は大変だったけど、山頂まで登れて良かった」と笑顔で話した。