2024年(令和6年) 5月9日(木)付紙面より
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美術教師として鶴岡市内の高校で教壇に立つ傍ら、油彩の秀作を多く残し2004年、45歳の若さで亡くなった酒田市出身の故佐々木伸さん。没後20年の節目にあたり、実兄の佐々木洋さん(神奈川県在住)が地元の画家らと共に企画した初の回顧展が、酒田市美術館市民ギャラリーで開かれ、教え子をはじめ来館者がその画業に触れている。
伸さんは1959年、酒田市本町二丁目生まれ。酒田東高、筑波大芸術専門群卒業後、県立高校の美術教師となり山添(閉校)、鶴岡南(現・致道館)、鶴岡中央の教壇に立つ一方、鶴岡に拠点を置く美術愛好団体・白甕社の会員として作品を発表し続けた。2004年12月に死去。
伸さんが住んでいた旧宅を整理していた洋さんが21年、屋根裏部屋から数十点の油彩を発見。没後20年にあたる今年、「弟の思いを遂げる展覧会を」と、酒田市芸術文化協会顧問で洋画家の工藤幸治さん(84)=元美術教師、酒田あいおい工藤美術館長=らの協力で初となる回顧展を企画した。
屋根裏部屋に残された作品を中心に、白甕社展出品作など計26点を展示。「憧憬」と題した作品は楕円(だえん)状のオリジナルキャンバスを使用、天から降り注ぐような光を浴びた裸婦を淡く浮かび上がらせている。「契」と称した小品は、光と影を巧みに操り、裸婦が目の前にいるかのような錯覚を抱く。
洋さんは回顧展に際して「一人の美術教師の絵画に懸けた途方もない情熱を回顧していただければ」とのコメントを寄せている。工藤さんは「深い感性、確かなデッサンで描かれた秀作が並ぶ。光と影で造形的な美しさを表現しており、この機会にぜひ伸さんの作品に触れてほしい」と話した。入場無料。展示は12日(日)まで。