2024年(令和6年) 5月23日(木)付紙面より
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鶴岡市の鶴岡アートフォーラムで19日、山形市出身の絵本作家、荒井良二さんを迎えた「こども美術ワークショップ」が行われ、幼児から小学生までの子どもたちが荒井さんと一緒に色とりどりの絵の具で大きな木を描いた。
今年で創立100周年を迎えた美術団体「白甕社」(齋藤拓委員長)が記念事業の一環で企画し、庄内各地をはじめ山形市内や仙台市内から3―11歳の子ども33人が参加した。
用意された縦5メートル、横1・15メートルの大きな水彩用の厚紙4枚を目にした荒井さんは、アートフォーラムから見える大木を眺めた後、「そうだ木を描こう。おっきな木を」と提案し、即興で木の幹に見立てたガムテープを紙に貼った。「上手、下手、失敗、そういうのは全然関係ないよ。みんなで枝や葉っぱ、花や実を描こう。家があっても魚だっていてもいい。好きな色で好きなものを描こう」と呼び掛けた。
子どもたちは大小の絵筆やスポンジ、スプレーのほか、素手で自由奔放に色を付け、荒井さんは「同じ色でなく、いろんな色を使って」「いい色だねえ」「面白いもの描いたね」と話し掛けながら一緒に楽しんだ。参加した鶴岡市内の小学3年生は「堂々と自由にできて楽しい」と夢中になって好きな絵を描いていた。水彩、アクリル絵の具のほか、クレヨンも使った。
荒井さんは1956年、山形市生まれ。日大山形高卒、日本大芸術学部美術学科修了。90年に絵本『MELODY』でデビュー後、数々の絵本や挿画を手掛ける。2005年には児童文学のノーベル賞とも呼ばれる、スウェーデンの世界的な文学賞アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人として初めて受賞。作品は国内外で高く評価されている。
ワークショップ前日の18日には鶴岡市の荘内神社参集殿で白甕社主催の講演会もあり、首都圏など県外を含め荒井さんのファンら200人余りが聴講。荒井さんは「山形の高校時代に『絵を描くことで社会とつながりたい』と描いた思いは今も変わらない。これからも社会とつながりが持てる絵本作りや絵を描く仕事ができれば」と語った。
子どもたちと描いたワークショップの4枚の作品は、8月28日―9月8日にアートフォーラムで開かれる「創立100周年記念白甕社美術展」で公開される。