2024年(令和6年) 5月23日(木)付紙面より
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山形大学の研究者と庄内の料理人の知見を掛け合わせ、持続可能な食文化の推進を図る「第2回ミートアップイベント」が20日、鶴岡市末広町のフランス料理店blanc blanc gastropubで行われた。先端技術でアルファ化(非晶化、のり化)した米粉を料理に使い、従来の米粉との違いを確かめたほか、離乳食や嚥下(えんげ)食、非常食としての活用などを探った。
同大農学部が進めてきた食料自給圏「スマート・テロワール」構想のもと、6学部全てが関わる同大アグリフードシステム先端研究センター(YAAS、ヤース)は6次産業をベースに循環型食料生産の実現に取り組んでいる。ミートアップイベントは取り組みの一環で、研究者と料理人、食に関わる事業者などが集まり、フードテックの最前線を体験する。昨年11月に初めて開催、今回で2回目。
今回は約20人が出席。「アルファ化米粉」をテーマに、試食や説明会を通してアルファ化米粉の社会実装に向け意見を交わした。アルファ化米粉は同大工学部(米沢市)で独自に開発したもの。従来、アルファ化米粉を作るには炊飯、乾燥、粉砕という工程が必要で時間とコストがかかった。
これに対し同学部の西岡昭博教授が中心となり、新たな技術開発に着手。生米を粉砕する臼に熱を加え、炊飯・乾燥せずに粉砕するだけでアルファ化米粉が製造できる粉砕機を開発した。現在、米沢市などにベンチャー企業を立ち上げ、試験的に米粉の提供・販売を行っている。
今回のミートアップイベントでは、新たな方法で作られた米粉を使ってblanc blanc gastropubの五十嵐督敬シェフがフレンチに仕立てた。メニューは地魚のフリットや米粉パン、カモのシチューやアマエビのスープなど。シチューやスープはとろみに米粉を使用しており、パンは米粉100%のものと米粉と小麦粉を50%ずつ使用したものの2種類を用意し食べ比べた。
試食前に西岡教授は「新たな方法で製造したアルファ化米粉の特徴は、100度以上で加熱しているため殺菌効果が高く、それでいて米の甘みをしっかり残している。水分はほとんど飛んでいるため長期保存が可能で、お湯や水を注げばすぐにおかゆ状となるため火を使う必要がない」と解説した。
試食に参加した老人保健施設のぞみの園(鶴岡市茅原町)に勤務する内山和紀さん(40)は「米の甘みが邪魔しなければ、嚥下食のつなぎに使えるのでは。一方で粘度が高いため飲み込みにくいと感じる人がいるかも。加熱する必要がないのはポイントが高い。近年多発する災害で被災した際、一番困るのは子どもや高齢者。非常食として活躍できる可能性もある」と話していた。