2024年(令和6年) 7月10日(水)付紙面より
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夏は庄内浜が一年で一番華やぐ季節。12日の鶴岡市湯野浜をトップに11海水浴場で海開きがあり、砂浜に子どもたちの歓声が響く。県が実施した海水の水質検査でも、環境省の水質基準を全ての海水浴場が満たし、安心して海に入ることができる。あとは、無理をしない安全な行動で事故のない海のシーズンを楽しんでもらいたい。
今度の3連休最終日の15日は「海の日」。日本は海に囲まれている。海の恵みや文化に感謝する日。かつては7月20日と決まっていたが、休日を増やすハッピーマンデー制度で7月の第3月曜日になった。その日はもちろんの事、普段から海の環境を守っていこうという精神は変わらず持ち続けたい。
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海の日を前にした6日、子どもたちが参加して鶴岡市油戸漁港に面した丘陵地で植樹活動があった。山の緑を育てて海の環境を良好にし、魚介類の成長を助けようという「魚の森づくり活動」。森の腐葉土で作られる栄養素が川から海に入ることで海藻が育ち、プランクトンを発生させ、海藻は小魚の隠れ家になって成長を助ける。そうした循環があって人は海の恵みを頂くことができる。
油戸漁港に接する魚の森は広さ約1・6ヘクタール。1997年から県の「魚の森づくり」モデル事業で整備した丘陵地には、クロマツ、カシワ、アキグミ、ネムノキなどが植樹されている。植樹には鶴岡緑の少年団員、加茂水産高生、漁業関係者が参加、植樹後は地元の住民や漁業者が下刈りなどの手入れをしている。多方面からのボランティアで森と海が守られていることになる。
植樹に参加した小学5年生は「ヒラメも放流し、森と川と海がつながっていることを学ぶことができて良かった」と話した。「机上」での学びではなく「実学」による生きた体験は、いつまでも記憶に残る。そうした子どもたちの心を育てることも、魚の森づくり活動は担っている。海の環境を守り、沿岸漁業を元気にするためにも、いつまでも受け継いでいきたい。
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昨年6月、鶴岡市加茂にオープンした「渚の交番カモンマーレ」。海を取り巻く活動に関わる人々が情報を交換し、海が持つ資源と潜在力を「点」から「線」・「面」へと広げ、豊かな海づくりを通じて地域の活性化につなげる。その来館者が10万人に達した。10万人目は寒河江市の人だった。海辺の施設が県内陸まで浸透してきている証しであろう。
先頃の県海洋教育研究会の総会で、今月下旬に県内の小学生が山形の海を学ぶ「やまがた海洋塾2024」を開くことが報告された。近年、海洋汚染が深刻化している。元は人の生活が関わっての汚染だ。海を大切にして守ることの第一は、ごみを出さないことから始まる。そのことを「海の日」から学びたい。