2024年(令和6年) 7月19日(金)付紙面より
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映画「ブタがいた教室」「そして、バトンは渡された」などの作品を手掛けた映画監督・脚本家の前田哲さんのトークベント・上映会が13日、酒田市のル・ポットフーで開かれた。約100人の参加者が前田監督がメガホンを取った映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」を観賞、製作裏話や作品に込めた思いなどを聞いた。
同市の酒田駅前交流拠点施設「ミライニ」が実施しているアートに関する興味・関心を育むことを目的としたプロジェクト「SAKATART」(サカタート)の一環。かつて「世界一と言われた映画館」があった酒田で、市民からより映画に親しみを持ってもらおうと企画した。
この日は市内外の映画好きを中心に、多くの人が訪れた。「こんな夜更けにバナナかよ」は、筋ジストロフィーにかかりながらも自身の夢や欲に素直に生き、周囲に愛され続けた実在の人物・鹿野靖明さんと、彼を支えながら共に生きたボランティアの人々や家族の姿を描いた人間ドラマ。俳優の大泉洋さんが主演を務め、話題となった。上映後、SAKATARTプロジェクトのアート監修を手掛ける、東北芸術工科大学(山形市)元教授の原高史さんと、共に芸工大で教壇に立っていた縁がある前田監督がトークを繰り広げた。
前田監督は原さんとユーモラスに掛け合いながら、映画のために出演者全員が介護研修に参加したことや、重要なシーンで俳優が役の心情を考えるため撮影を一時中断したことなど、製作裏話を披露。現在公開中の最新作「90歳。何がめでたい」の撮影秘話にも触れ、参加者たちは時々笑いながら熱心に耳を傾けていた。
参加者からの「どんな小説や本を読んだ時に映画にしようと思うのか」という質問に、前田監督は「“生きる”ことや命、差別などに意識が向く。作品で“人間”を描きたいし、見る人にメッセージを送りたい。映画は娯楽であることが大前提だけど、映画を通して見た人と何かを共有できたら。メッセージは見た人が自由に受け取ってほしい」と語った。