2024年(令和6年) 10月30日(水)付紙面より
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衆院選で国民は自民党に厳しい審判を下した。大敗して公明党との連立でも政権維持に必要な過半数の議席に届かない。比較第1党の座にあるが、野党の出方次第で政権交代の可能性もある。首相指名や補正予算審議など、野党の協力を得ないと国会は前に進まない。石破茂首相の退陣論も出るなど早くも政局の動きまで出て、国会は新たな局面に入った。
山形3区は自民党の加藤鮎子氏が4選された。しかし得票は前回の10万8558票から1万4649票減った。有権者が減少したこともあるが、それ以上に政治への厳しい目が向けられたことは否めない。ただ、地方創生、少子化対策、子育て政策への期待感を持って支持した有権者も多いはずだ。加藤氏はそれに応えなければならない。
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選挙の争点は何だったのか。自民党議員の「政治とカネ」問題が追及された。「給付と減税」の公約を各党が掲げたが、財源をどのように手当てするのかがあまり語られなかった。財源の裏付けを語ってこそ、公党の選挙公約というものではないか。膨張する防衛予算を削って充てるとの主張もあったが、日本列島は近隣諸国による領空、領海侵犯が相次いでいる。平和外交こそ最優先だが、防衛力をおろそかにできないことも確かであろう。
自民党の大敗の原因になった「裏金問題」は、安倍晋三政権時代のおごりから尾を引いたもので、国民の不信感は長く続いた。選挙の顔になった石破首相は、総裁選で「予算委員会を開いた後に信を問う」と語っていたが、それもなく首相就任から8日で解散した。「裏金議員」を公認しなかったり、比例代表の名簿から外すなど、党としての「けじめ」を付けて選挙に臨んだが、逆風は収まらなかった。
自民党内では選挙中から「石破おろし」がささやかれた。それは、反省を知らない体質というものか。国民からお灸(きゅう)を据えられた時こそ、党が一致して信頼を得られる政治活動をしなければならないはずだ。ポスト石破を狙う動きが水面下で動き出しているのは、国民を蚊帳の外に置くような「永田町の論理」ではないか。国会議員とは“何者”と問わねばならない。
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立憲民主党は「政権交代が最大の政治改革」を掲げて議席を大幅に増やした。野党第1党を維持したが、野党が団結して政権を担うことは懐疑的だ。野党各党が目指す政策に隔たりがあることは、選挙協力関係がまとまらなかったことからも分かる。
自民党は今後、無所属議員を追加公認したり、野党と政策ごとに協力することで政権運営を継続したい考えのようだ。1党支配より多党間協議・協力によって、選挙公約で掲げた国民のための政策が実現することになれば、望ましいことでもある。新しい政治の時代に入ることになる。政局にとらわれている場合ではない。