今回取り上げる素材は栄養価が高く評価されている野菜だ。「世界三大健康イモ」の一つに数えられているところからもその実力がうかがえる。旧朝日村が特産化に取り組み、仙台方面からも引き合いがあるらしい。
「お待たせして申し訳ありませんでした」。鶴岡市の産直あさひグーにアピオスを出荷している菅原アツ子さん=砂川=が笑顔で出迎えてくれた。
菅原さんには3月初旬、土の中で冬を越したアピオスの取材を依頼した。「雪が溶けたら掘ってきます」と、約束を取り付けていたが、「収穫する暇がない」と、「新物」が出る秋まで延期になっていた。
2002年に旧朝日村の農家がアピオスを楽しむ会を結成。菅原さんはその前年、試験栽培していたほ場でたまたまアピオスの花に出合った。「甘酸っぱいとてもいい香りがして、何だろうと思いました」。アピオスの魅力に引き込まれ楽しむ会に参加、栽培を開始した。
アピオスは北米原産の豆科の野菜で、インディオが食用にしていた。水分はあまり多くないが、カルシウムはジャガイモの30倍、エネルギー、タンパク質、炭水化物などの含有量はほかのイモより圧倒的に多い。食物繊維が豊富で便秘の解消、肩こりや冷え性の予防、高血圧の抑制、肝機能の安定などへの効果が期待できる。
料理には下ゆでが必要。ところが、その栄養価のせいか、「鍋に張り付いた粘りけが取れなくなってしまいます」。消費者の負担を考慮し、菅原さんはゆでてから出荷している。冷凍保存も可能で、グーには「ゆでたて」と下ゆでして冷凍したものの2タイプが置いてある。
掘ったばかりのアピオスを見せてもらった。つるにサトイモほどの大きさの茶色いイモが数珠状態につながっている。「つるを切って汚れを落としたものがこれです」。下ゆでしたアピオスは、形はサトイモに近く、色はショウガを思わせる濃い茶色だ。
どんな料理に変ぼうするのだろうかと思っていると、通りかかったご主人がゆでてあるアピオスをそのまま口に入れたので、さっそくまねてみる。なるほどイモの味がする。甘みはそれほどないが、ホクホクして、おなかにどっしりとくるボリューム感もある。子どものおやつにもいいかもしれない。
そのまま食べてもいいが、ジャガイモと一緒のポテトサラダやコロッケなどに向いているそうだ。「カレーに入れてもおいしいですよ」と言われ、今度やってみようと思った。
菅原さんは天ぷらもすすめる。アピオスの粉末大さじ1杯ほどを天ぷら粉に入れて揚げる。「冷めてもしなっとならず、かりっとしているの。もう少ししたら、ほかの生産者がグーに出してくれると思います」。これもぜひやってみたい。
アピオスの粉末も用途が多く、寒天やシフォンケーキなどに使うといいそうだ。グーでは粉末を練り込んだうどんの乾めんも販売している。
仙台圏の人も買いに来るという菅原さんのアピオスは500グラム入って700円。鶴岡市下名川の産直あさひグー=電0235(58)1455=で販売している。
アピオス300グラム、ジャガイモ300グラム、キュウリとニンジン150グラム、ハム150グラム、コーン缶1個、タマネギ半分、レーズン少々、パセリ少々、マヨネーズ適量
2008年11月15日付紙面掲載