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「谷定孟宗」下ゆで無用の地物

九州、静岡と「孟宗前線」が北上を続け、今年は例年より早く庄内に到達したようだ。地物を待ち望んだ人には朗報だろう。

「今の時期は、店が開くと、ドッと孟宗のコーナーに人が集まってくるそうです」。鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」で孟宗を販売している佐藤作美さん=谷定=が笑顔で話す。

午前6時に佐藤家を訪れると、作美さんとともに出迎えてくれた夫の安一さんが「それでは行きますか。さっき、一度掘っていますが、別の場所にも出ているはずです」と誘ってくれた。自宅近くの農道沿いに竹やぶがあった。金べらという細長い鉄の棒を携えた安一さんの後について斜面を登る。

「あ、そこです」と安一さん。素人目には分からないが、言われてみると先っぽが出ていた。「昨日の夕方、目印を付けておいたんです」。2回、3回と地面に金べらを差し込むと、小さな孟宗が転がった。見た目にも軟らかそうだ。

鮮度が命。佐藤さんの谷定孟宗はとても軟らかい

竹林の管理に手間暇かかることは、このコーナーで過去に取材した農家に聞いている。「収穫を終えた7月に親竹を選び、幹を揺すります。これを『裏振り』と言います。すると先の部分が落ちて、ちょん切ったようになる。残りの竹は切り落とします」。優良な竹を残すための作業で、柿の木の剪定のようなものらしい。

佐藤家に戻り、作美さんに話を聞いた。谷定地区は湯田川と並ぶ孟宗の名産地。だが、「宣伝で負けて、谷定の知名度が低い。味なら負けないのに」と作美さんは悔しそうだ。

おすすめレシピは「うちでは毎日食べ続けても誰も飽きたと言わない」という孟宗汁。下ゆではせず、孟宗は水から煮るのだそうだ。「テレビなどではあく抜きの米ぬかを入れてゆでていますが、谷定孟宗はそんなことする必要はありません。ゆで汁からもだしが出るので、捨てるなんてもったいない」。

作美さんは、根元部分にクッキングペーパーを敷いて販売するという細やかな配慮もしている。「掘りたての孟宗から水分が出て、見た目が悪いからです」と理由を教えてくれた。

「孟宗は生魚と一緒です。買った孟宗を車に置きっ放しにはしないでください。すぐに調理できない場合、下ゆでだけでもしておくと鮮度落ちを防げます」。作美さんは鮮度の大切さを力説する。「冷水から」と「鮮度」が谷定孟宗のこだわりだ。

帰宅後、出勤前のあわただしい時間を使って孟宗汁を作った。掘りたてだからか、さっと火を通しただけなのにとても軟らかい。昼に試食した編集局スタッフにも「おいしい」と好評だった。やはり孟宗は地物に限ると実感した。

連休で帰省した家族や友人にもぜひ食べさせたい佐藤さんの孟宗は1袋300円から。鶴岡市覚岸寺のしゃきっと=電0235(29)9963=で販売している。

佐藤さんのおすすめレシピ

孟宗汁

○材料

孟宗、厚揚げ、生シイタケ(ほかのキノコでも可)、みそ、酒かす、煮干し

○作り方

  1. 孟宗の皮をむき、適当な大きさに切り、孟宗がかぶるくらいの水を入れて煮干しと一緒に煮る。
  2. 沸騰したらあくを取り、水かお湯を加えて5分ぐらい煮る。
  3. キノコと厚揚げを入れ、酒かすとみそで味を付ける。好みで豚肉入れてもよい。
  4. 材料によく味がしみ込んだら出来上がり。

2009年5月2日付紙面掲載

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