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「アイスプラント」塩味付き「不思議野菜」

「めんたま畑からの情報です。次回はアイスプラントという新しい野菜の取材をお願いします」。県庄内総合支庁酒田農業技術普及課からの要請で、初めて耳にする野菜を取り上げることになった。「予備調査」で取材前日、酒田市のめんたま畑を訪れたが、現物はすでに売り切れ、試食用の葉っぱが残っているだけ。どれどれと口に入れてみる。「えっ、野菜なのにしょっぱい。なぜ」。疑問に対する回答は翌日に持ち越し、帰途に就いた。

「去年、めんたま畑の組合員になりましたが、それまでは自家用と知人にあげるぐらいの野菜を作っていただけ。当たり前のことをしていてはベテランたちには負けてしまうので、珍しい物を作ろうと思ったんですよ」。長谷部一夫さん=飛鳥=が白い歯をのぞかせた。

自宅前で立ち話をした後、さっそくハウスに連れて行ってもらった。発泡スチロールの容器から緑色の葉がいくつも広がり、水滴のようなものが見える。「このキラキラした氷の粒みたいなものが水を貯めているんです」。

葉っぱの表面に霜が降りたようなアイスプラント。本来は指の先にある新芽が商品となる

晩秋の寒い朝、初霜に覆われた葉をカメラに収めることがある。その光景を思い出したので口にすると、「なるほど、言われてみればそうですね」と同意してくれた。ハウスの中は汗をかくほど暑いのに、初霜のような風景なのだからミスマッチに思える。

「この野菜のおもしろくてすごいところは塩味にあります。茎の所を食べてください」と勧められた。試食で食べた葉と同じ塩味だが、もっとしゃきしゃきしている。葉は少し「もたっ」という感じだ。どちらもみずみずしさを備えている。塩っ気があって水分がたっぷりという不思議な味だ。

この塩分はどこから来るのだろうか? 再び疑問がわいてきた。「週に1回、2リットル当たりの水に10グラムの塩を入れてかけてあげるんです」と聞き、またまたびっくり。塩水を浴びても枯れず、吸収してしまうとは。

「最初に葉が出て、次にまた葉が出て、その後に新芽が顔を出す。それを10個ぐらい入れて70グラム120円で売っています。首都圏などでは300円ぐらいするそうですが、こちらではそうはいきません」と苦笑いした。

調べてみたらアイスプラントはサボテンの仲間で、フランス料理の高級食材でもあるらしい。そう思うとかなりのお買い得価格なのだろう。

カリウムやナトリウム、カロテンを豊富に含んでいるというのも好ましい。「メタボに効果があるようですよ」と言われ、定期的に買いに来ようと思った。食べ方はやはりサラダがメーンで、トマトやアスパラとの相性がいいそうだ。「天ぷらもおいしいようですよ」とも教えてくれた。

試食用に少し出している葉っぱ部分がもったいないと思ったので、「少し価格を下げて出してみてはどうですか」と提案してみたら「モニター用にやってみましょう」と快諾してくれたので、新芽が売り切れていたら葉っぱを買うことをおすすめしたい。

今回はレシピなし。わが家では生の食感を楽しんだが、「サンドイッチに合うかも」「冷しゃぶにもいいのでは」という意見が出た。今度、ぜひ試してみたい。

栽培法も未確立で、「未来の野菜」とも言われるアイスプラント。長谷部さんは「まだ手探りですが、面白いと言ってもらえれば」と話す。酒田市飛鳥のめんたま畑=電0234(61)7200=で販売できそうだ。

2009年6月6日付紙面掲載

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