年明けに取り上げる素材を探しに年末、鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」に足を運んだ。そこで出合ったのが「百万石かぶ」。見た目は普通の白カブの3倍ぐらいの大きさで、京野菜の聖護院かぶ、聖護院大根とそっくりだ。産直の名前にちなんで付けたものだろうか。そんな疑問を持ちながら、大滝ゆき子さん=同市千安京田=を訪ねた。
「新しいものに挑戦してみようと、栽培を始めて4年ほどたちます。種苗会社が開発したカブのようです。『百万石の里に合う野菜だ』と言って、みんなが喜んでくれました」。こちらが質問をする前に大滝さんが答えてくれた。後で調べてみると、金沢の在来野菜がルーツらしい。なるほど「加賀百万石」ということだったかと納得した。
しゃきっとで見た際、素人目にはカブか大根か区別がつかなかった。「つやはカブの方がいいです」と大滝さんが見分け方のポイントを教えてくれた。これほど大きいカブがどんな料理になるのだろうか。こんな疑問に「ホテルや旅館から20個、50個単位で注文がきます。漬物に使うのだと思います」。
京都の聖護院かぶは千枚漬けに使われる。「種のパッケージにも千枚漬けにと書いてありました」。やはりそうかと納得。「わたしは塩で一夜漬けにしています。ほかにベーコンなどとのいため物や鶏肉との煮物などに使います。火が通るのが早いので注意してください。生のままみそやからしマヨネーズで食べるのもいいですよ」と料理法を解説してくれた。
大滝さんがこのコーナーに登場するのは2007年5月のスティックシュンギクに続いて2度目。「きれいな野菜を作る」と定評がある生産者と紹介したが、「農薬は使わず、消毒も極力避ける」と安全性にもこだわる姿勢は変わっていない。
砂丘地にある大滝さんのハウスに連れて行ってもらった。百万石かぶのほか、青菜やホウレン草などの葉野菜も植えてある。虫食いがあるのは「安全の証し」だろう。
帰宅後、百万石かぶに包丁を入れ、生のままみそとみそマヨネーズでいただいた。水分が多く、とてもみずみしい。以前に紹介したサラダかぶとはタイプが違う。カブと大根、それぞれの良さを併せ持った野菜という感じだ。
百万石かぶにブロックベーコン、ジャガイモを加え、ポトフ風の料理も作ってみた。カブがとても甘くておいしい。ただ、大滝さんの忠告もむなしく、気付いたときには火が通っていて、少し軟らかくなったのが残念。「茎と葉は硬いと思うので料理に向かない」という忠告に従わず、一夜漬けに茎と葉を入れた。茎はやはり硬く、色づけに少し入れるのは許容範囲と思ったが、好みが分かれるだろう。
大滝さんの百万石かぶは大きさにもよるが1個100円程度。鶴岡市覚岸寺の「しゃきっと」=電0235(29)9963=で今月中旬まで販売している。
百万石かぶ1個、ニンジン少量、ベーコン2~3枚、しょうゆ適量、かたくり粉少々
2010年1月9日付紙面掲載