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「ヤマトイモ」はしで持ち上がる粘り

今回取り上げる素材はヤマトイモ。ヤマイモの一種だろうが、食べ慣れているナガイモと違うのだろうか。そんな疑問を抱いて酒田市八幡地域の産直たわわに向かった。たわわ運営組合の組合長でもある石澤拓夫さん=市条=が出迎えてくれた。さっそく疑問をぶつけてみた。

「ヤマイモ類は自生する日本原産のジネンジョ、中国原産のナガイモ、沖縄などの暖地で栽培されるダイショに大別されます。ヤマトイモはナガイモの仲間。イチョウの形をしているからイチョウイモとも呼びます。長い時間をかけて変化していったのでしょうね」。明快な答えが返ってきた。そして「ナガイモはすりおろすとゆるいが、ヤマトイモは粘り気が強く、はしでも持ち上がります。食べた人は忘れられなくなりますよ」と胸を張った。

石澤さんは福島県の出身。高校卒業後、神奈川県で農業改良普及員に。「生産者の立場で経験と技術を生かしてみたい」という思いを抱いていた。旧櫛引町出身の妻のはる子さんと帰省した際、鳥海南麓の開拓地が売り出されることをチラシで知ったのが旧八幡町を選ぶきっかけになった。

安定した県職員の座を捨て農家への転身を決断し、54歳の時に八幡に移り住んだ。退職金をそっくりつぎ込み、農地を購入、ハウスを建設した。

ヤマトイモは普及員時代に農家に推奨した作物。「思い入れがあり、種イモを持ってきてしまいました」と笑う。「関東では利根川沿いの堆積した砂地で栽培されている。鳥海南麓より砂丘の方が合う」と遊佐町内の農地を借りた。

ヤマトイモは形で3種類に大別される。左から棒形、ばち形、イチョウ形

ヤマトイモは形状から「棒形」、太鼓などに使うばちに似た「ばち形」そして「イチョウ形」の3種類に大別される。「形で味に差はない」と言うが、「昔はイチョウ形が喜ばれていた。最近は皮をむきやすい棒形が売れるようになりました」というように消費者の好みも変化している。

食べ方はナガイモとほとんど同じ。とろろにするのが一般的だが、そばやうどん、サラダ、お好み焼き、酢の物など用途は広い。「昔は洗って、枝毛を火であぶり、皮ごとすりおろしました」というから、面倒なら皮はむかなくともよさそうだ。

石澤さんのおすすめレシピは磯辺揚げ。「もちみたいで私は好きです。ワサビじょうゆで食べるとのりの味と辛みが生きます」という。ナガイモの仲間だから栄養価が高いのはもちろんだが、消化を促進するジアスターゼも多く含んでいる。

こんな優れものなのに庄内では知名度が低い。「昔の職場の同僚など神奈川や首都圏に行くのが大半。昨年から地元のスーパーでも出していますが、売れません。食文化はなかなか変わらないということでしょう」と苦笑いする。それでもたわわでは常連の固定客がついている。

いただいたヤマトイモをとろろにしてみた。だし汁は使わずにしょうゆを加えた。粘りがあり、確かにはしで持ち上がる。もちのようだ。ナガイモに比べて味もかなり濃い。個人的にはだし汁と合わせた方がいいと感じた。

石澤さんは「庄内で作っているのは私だけ」というツクネイモもたわわで販売している。関西で珍重されている丸形の「ナガイモ」だ。こちらも一般のナガイモより「濃度」が高かった。  たわわでは400グラム前後の中型サイズのヤマトイモを300円前後で販売している。正月料理に飽きた方にご飯と一緒にかき込んでほしいと思わせる味だった。

石澤さんのおすすめレシピ

ヤマトイモの磯辺揚げ

○材料

ヤマトイモ400g、のり6枚、卵1個、塩小さじ1、コショウ少々、酢(酢水用)大さじ2、かたくり粉大さじ3、揚げ油適量

○作り方

  1. ヤマトイモは皮をむいて酢水につけ、おろし金ですりおろす。
  2. のりは片面を少し火にあぶり6枚に切る。
  3. すったイモを卵1/2、かたくり粉、塩、コショウで味を整え、よく混ぜ合わせる。
  4. のりの片面に調味したイモを塗りつけて、くるくると巻き、最後に残っている卵汁を塗ってとじる。
  5. 中温に熱した油の中でさっと揚げ、油をよく切る。器に盛り、ワサビじょうゆを添える。

メモ すりおろしたヤマトイモだけをのりで巻いて揚げてもおいしい。

2007年1月6日付紙面掲載

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