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季節外れでもおいしく

読者から「昨年11月末、スーパーでみそ漬けにするとおいしいからと勧められ、タラの切り身を買いました。焼いて食べたら、確かに身も締まっていて美味でした。季節外れでも新鮮であればおいしいのでしょうか。植物の世界では、季節外れで咲いた花を不時開花(ふじかいか)などと呼びます。季節外れで捕れる魚を不時魚と呼ぶとしたら、そのベスト5というようなものを教えてください」という質問をいただきました。

まず旬という言葉について考えてみたいと思います。魚の場合、一般に脂が乗っておいしい時期、またはたくさん捕れて大漁に出回る時期を旬ととらえていいと思います。秋サバ、寒ブリなど、旬と季節が結びつく魚もいます。ただ、最近は気候の変化もあり、旬の時期がずれてきている魚もあります。

魚には1年に1回、おいしくなる時期があります。産卵前は餌をたくさん食べるので身が充実する、つまり脂が乗ってきます。するとうまみ成分も体内に蓄えられます。水産業界では、魚は産卵前においしくなり、その時期が旬であるという考え方をします。例外もあり、産卵前がおいしく、産卵後においしくなくなり、再び産卵期に向かう途中でうまくなるという魚もいます。旬が2回あるというわけです。

庄内で今が旬と言えばタラに尽きます。天候も悪く、なかなか地物は揚がっていません

自然界ではなく人間が作り出す旬もあります。初ガツオや土用丑(うし)のウナギがこれに当たるでしょう。もちろん鮮度もおいしさの大きな要因ですが、旬を外せばおいしくないと考えられます。

質問をくださった方は11月にタラを食べたとのことでした。この時期は産卵前ですから、身を食べるには季節外れとは言えません。でも、白子やアブラワタは未成熟ですから、どんがら汁を食べるなら季節外れと言えるかもしれません。

いろいろと調べてみましたが、旬でない時期の魚を指す言葉は見つかりませんでした。不時魚という言葉はおもしろいと思います。この言葉をこれから、使わせていただこうかとも考えています。

今の時期においしくない魚種を挙げるとすれば、晩春から初秋にかけておいしい「夏魚」と呼ばれるものがこれに相当すると思います。この辺でポピュラーなものなら、クチボソ、エンショウガレイ(マコガレイ)、スズキ、アイナメといったところです。でも、地域によってはいい状態にあるところもあるかもしれません。

今、クチボソを素焼き、エンショウを煮つけにして食べてはだめです。スズキやアイナメは夏なら刺し身ですが、今の時期は脂が乗っていません。料理人の方に聞いたら、天ぷらや空揚げなど「油料理」にするとおいしいということでした。衣を付けていため物に入れるのもいいでしょう。料理の際に脂(油)を加えるというのがポイントかもしれません。生食するならドレッシングをかけてカルパッチョにしてみてください。

おいしくない時期にその魚がたくさん捕れるということも珍しくありません。「ハンディ」をカバーできる料理にすれば、比較的おいしく召し上がることが可能です。質問をくださった方のように、皆さんも旬から外れた魚でも温かく見守ってあげてください。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年1月22日付紙面掲載

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