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身の締まりいい庄内のサケ

庄内では贈答用にサケのかす漬けが使われます。こんがり焼き上がったサケの味はまた格別です

今回は旬を迎えたサケの話をします。サケは寒い所を好み、寒流にすんでいるので、水揚げは北海道と東北に集中します。サケの雌1匹は約3000個の卵を産みますが、そのうち川に戻って来るのは2、3匹です。ほかの魚との違いは、サケは自分が生まれた川に帰るという点にあります。サケには、自分が生まれた時に親がいないという悲しい現実が待ち受けています。親も子の顔を見ることができません。サケの稚魚は、日本海や太平洋に出た後、一度、オホーツク海に集まり、次の秋までをそこで過ごし、北太平洋とベーリング海の間を行ったり来たりします。その後、再びオホーツク海に戻り、3~6歳になると生まれた川に戻るのです。

なぜ、サケは自分が生まれた川に戻ることができるのか。その理由は断定されていないようですが、川のにおいを判別できるのではないかと言われています。サケは犬の何千倍もの嗅覚を持つそうです。だから「自分の川」に戻れるのかもしれません。

サケを生で食べるルイベという調理法があります。北海道では冷凍したサケをそのままの状態で口に入れるのが本式の食べ方だそうです。ルイベの語源はアイヌ民族語のルイペからきています。アイヌ語で「ル」は溶ける、「イペ」は食べ物を指します。もともとは溶ける食べ物を意味していました。コマイという魚を冷凍して生で食べたのが最初で、後にサケが使われるようになったようです。今ではルイベ=サケのイメージが定着しています。氷点下20度以下に冷凍することで、サケの体内にいる寄生虫のアニサキスを死滅させ、食中毒の発生を避けます。また、冷凍すると水分が蒸発し、脂分が落ちるので、サケ特有の風味が感じられるのです。

庄内では袋に入った秋ザケの卵をハララゴと呼んでいます。ほかの地域では袋に入っているものを筋子、それをほぐしたものをイクラと区別しています。筋が黒ずんでいるハララゴもありますが、それよりも房の中に入っている卵の色が重要です。白濁したオレンジ色の卵が軟らかいと言われています。

サケを産地で比較すると、脂が乗っているのが北海道、体の色が銀色で見た目の良いのが北海道と三陸です。庄内のサケは、体にブナと呼ばれる線がはっきりしているのが特徴です。新潟県村上市の名物であるサケの酒浸しや新巻きザケにするのは、庄内など日本海側のサケが適していると言われています。京都のさけ茶漬けに使われていたのは、日本海側のサケだそうです。脂の乗りはほかの産地に劣っていても、身の締まりがいいからだと言われています。腹の身が厚いのも庄内産のサケの特長です。鮮度と身の締まりが良いので、庄内浜のサケはだし取りや鍋物にも適しています。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年10月30日付紙面掲載

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