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姿形、味とも日本人好み。タイ編(下)

タイは長命で、通常30年以上生きると言います。雄と雌の見分け方は、頭がこぶ状に張り出しているのが雄、全体が丸みを帯びているのが雌です。人間と同じですね。

タイの歴史について触れてみたいと思います。タイは古くから食用にされていました。貝塚から骨が見つかり、縄文人が食べていたことも明らかになっています。平安時代には「平魚(たいらうお)」と呼ばれていたようです。タイの呼び名の起源は、体型が平らな魚が略され、タイになったという説があります。

タイが「魚の王様」になったのは江戸時代以降のことです。それ以前はコイが最高の魚とされていました。都が内陸の京都にあり、手に入る最高の淡水魚がコイだったからでしょう。兼好法師は、「徒然草」の中で「コイは魚の中で1番」と言っているそうです。

天神祭を前に地物のタイが数多く揚がっています。価格も安いのでぜひ天然物を味わってください

「鯛」という字は、中国では別の魚を指すそうです。日本人が当てはめてしまったためこの字がタイを示すようになったとも言われています。えびす様が釣るめでたい魚という意味もあるでしょう。大きい位、つまり大位という言葉からタイになったという説もあります。

まとめてみると、一般的には、めでたい席に使われるめでたい魚からタイの名が出たと言われます。でも語呂合わせだけでなく、きれいな明るい色をしていて形も雄壮。味はどうかというと、他の魚に比べて非常に上品です。色、形、味どれも優れている。日本人の心根に通じるところがある魚なのです。日本では昔から、赤はおめでたい色とされてきました。そんな日本人の風習にも受け入れられたのでしょう。見た目と味ともになんといっても一番です。

私も刺し身ではタイが一番好きです。天神祭で食べるのを毎年、楽しみにしています。刺し身は皮にお湯をかけてすぐに冷水で冷やす「湯引き」にします。それとお吸い物。タイは皮と身の間に脂がのっているので、湯引きにすると「こりっ」という食感を味わうことができます。私にとってタイは、見るも美しく、食べてもおいしい大好きな魚です。市場にいいタイが揚がると、つい見とれてしまうことがあります。

今、庄内浜でタイが数多く揚がっています。天神祭でも安く買い求めることができると思います。タイを見てお祭りを思い出し、逆にお祭りからタイを連想したりする、そんな食材だと思います。タイは、文化、習慣と結びついたスローフードではないでしょうか。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年5月24日付紙面掲載

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