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活気にあふれる午前4時/番外編 一日を追う(上)

午前3時半の鶴岡市場。外はまだ暗い中、届いた荷を中に運び込む

昨年9月にスタートした「魚市場旬だより」が連載開始から1年を迎えた。鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店の手塚太一専務が、庄内浜の魚介類を中心にした旬の話題を提供している。節目を記念し、番外編として「鶴岡魚市場」の一日を追った。

2カ月の禁漁が解け、庄内浜の底引き網漁が9月1日再開された。翌朝、鶴岡市馬場町の内川沿いにある鶴岡魚市場に地物の魚が次々と持ち込まれた。

「おはようございます。よく起きられましたね」。暗闇に包まれた午前3時20分、市場を訪ねると太一専務が笑顔で迎えてくれた。手塚商店に隣接する鶴岡魚市場は小学校の体育館ほどの広さだ。木造建築で天井が高い。時代を感じさせる。

「明治か大正に建てられ、もともとは芝居小屋でした。2階は客席だったそうです。戦時中の5年間は軍事工場に使われていました」。太一専務の父親の手塚克也社長が歴史を教えてくれた。「県内の市場で一番古い建物です」とその横で太一専務が笑う。

場内は人の姿もまばらで、並んでいる魚もまだ少ない。ギンダラやマグロ、紅ザケなどが目に飛び込んできた。「地物が来るのはこれからです。午前4時から売りが始まります」と太一専務が荷を移動させながら話す。

魚市場には「産地市場」と「消費地市場」がある。魚介類が水揚げされる港に設けられているのが産地市場。庄内では由良や鼠ケ関、酒田港などがこれに当たる。産地市場で競り落とされた魚は、東京・築地に代表される消費地市場に運ばれる。鶴岡魚市場も消費地市場だ。仲買人たちは消費地市場で、「卸売人」「荷受け」と呼ばれる卸売業者から魚を仕入れていく。

鶴岡市場の卸売業者は現在、手塚商店と鶴岡魚類の2社。場内の売り場は二分され、奥の半分が手塚商店、手前が鶴岡魚類のスペース。鶴岡市場には100人近い仲買人が登録しており、壁に木製の名札がかけてある。仲買人はマチの魚屋さんなどの小売店でもある。

カジキマグロをさばく手塚商店のスタッフ。冷凍ではない気仙沼産の生だ

市場の奥に体長1m50cmはあろうかという大きな魚が1匹横たわっていた。手塚商店のスタッフが包丁を入れる。「気仙沼産の生のカジキマグロです。48kgだから中ぐらい。すし屋ではなく、仕出し屋さんや魚屋さんに行きます。はいどうぞ」と切り分けた赤身の一切れをくれた。脂がのっていておいしい。

「マグロより白身という地域性なので、需要に応じて仕入れています」と太一専務が解説する。クチボソガレイが入った発泡スチロールの「トロ箱」が並ぶ中、1匹だけ木製の台に乗せられたカジキマグロは肩身が狭そうに見える。

午前4時が近づいたころ、市場内がざわめき始めた。いつの間にか仲買人たちの数が増えている。「来た、来た、来たぞー」。地物を積んだトラックが出入り口に横づけされた。前日夕方、庄内浜に水揚げされた鮮魚が場内に運び込まれると、それまで静かだった仲買人たちのボルテージが一気に上がった。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年9月10日付紙面掲載

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