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市場価格のいろいろ

読者から「新聞の市況欄に建値という単語が入っています。建値とは何ですか。市場価格の高値と中値の違いについて教えてください。夕方、新聞で見た魚の価格が安かったので翌日、魚屋さんに買いに行きましたが、安くありませんでした。どんな理由が考えられますか」という質問をいただきました。

建値とは、辞書によると生産者が卸売業者に公表する販売価格とあります。卸売市場に出荷する生産者とは、魚市場なら漁師さん、青果物市場なら農家となります。建値を簡単に言うと、鶴岡魚市場を例に取ると、魚を出荷した人が市場で仲買人さんに売ってほしい価格ということになります。ただ、市場価格は、需要と供給の関係で決まりますから、建値で取引されるとは限らないわけです。

建値に対して浜値があります。最初に魚が水揚げされた市場、つまり由良や鼠ケ関などの「産地市場」で出てくる価格が浜値です。魚介類は、産地市場から鶴岡市場のような消費地市場に運ばれてきます。そこで、浜値に運賃などの必要経費を加算し、○○円で仲買人さんに売ってほしいという値段が出るわけです。これが建値です。建値とは「希望卸売価格」と理解してください。

われわれは、市場とは正しい価格が生まれる場所という理想を持っています。しかし、価格は需給の関係で左右されますから、場合によっては消費地市場で浜値を下回る価格で取引されることもあります。つまり原価割れという事態も起こり得るのです。

次に高値と中値についてお話ししましょう。新聞にはこの2つの値段が書いてありますが、ほかに安値というのもあります。皆さんにとって身近な魚であるアジで説明します。

同じ日に同じ産地で捕れた同じサイズのアジが高値、安値と分かれるのではありません。魚は一般的に大きい方が高く、小さい物が安いという傾向にあります。前に取り上げましたが、魚はたくさんの用途に耐える物ほど価値が上がります。アジの高値が1000円、安値が500円の場合、大きくて刺し身にも使え、少量しか市場に入荷しない物が高値になったりするのです。中値とは、数量もあり、さほど大きくなくとも食べるのにはちょうど良く、仲買人の購買意欲をそそるぐらいの量が入った物と思ってください。安値とは、例えば鶴岡の人では食べきれないほど大量のアジが市場に入荷したという場合があるでしょう。食用としては空揚げなどしか使えない小さなアジが該当したりもします。

次に「新聞で見ると安いのに店では安くなかった」ということですが、お店でどのような魚を仕入れたかというのも大きなポイントです。すし屋さんや料理屋さんが使うアジは、一般家庭で買う物とはかなり違います。家庭の夕飯の塩ふり焼き用ならもっとお求めやすい価格になります。買いに行った魚屋さんが置いているアジが刺し身用だったら、新聞で見た翌日に魚屋さんに足を運んでも安くなかったりするのです。

鶴岡魚市場にはいろんな魚が入り、仲買人さんたちが目利きをして買っていきます

同じ魚種でも入荷量、大きさ、持っている価値という要素で高値と安値に分かれます。安値のものを買おうとしたら、小さなアジだったということもあるかもしれません。魚はびっくりするほど高かったり、逆に安かったりすることがあると覚えておいてください。

また、一匹丸ごと売っているのか、三枚おろしか、刺し身になっているのかでも価格が違うかもしれません。手を加えられていれば、それほど安くはないかもしれませんね。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年3月15日付紙面掲載

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