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初体験“ガンブツ”の味

先日、鶴岡市内の魚屋さんに「うまい物があるからちょっと来い」と言われて出かけていきました。そこで出合った魚がガンブツです。これは庄内の地方名で、全国的には「ソウハチ(宗八)ガレイ」と呼ばれています。

ソウハチガレイはもともと、北海道の名産で、干物などにして売られています。今の時期に庄内浜で捕れるソウハチガレイを地元では「青山ガンブツ」と呼びます。雪が解けて山が青々としてくる今がうまい魚なのだそうです。

産卵期を迎えた魚もいるこの時期は、旬と旬のはざま、つまり端境期という面があります。そんな季節においしい青山ガンブツは、特筆すべき魚だと思いました。今から梅雨の前までが旬です。このように魚の前に○○という修飾語が付くケースがよくあります。庄内で言えば、寒ダラがその代表格でしょうが、必ずしもその魚がおいしい時期を表すとは限りません。いつかその特集もしてみたいと思います。

さて、青山ガンブツの料理法ですが、うろこと内臓を取って、皿に載せて塩を振ります。つまりひと塩するわけです。下味を付けたところで焼いて食べます。これがおいしくて、いやはや驚いてしまいました。脂がのってくせがなく、焼き魚にぴったりなのです。旬のカレイのおいしさをあらためて感じました。

年配の魚屋さんや関係者の中で、青山ガンブツはひそかに知られているのだそうです。今の言葉で言う「マイブーム」といったところでしょうか。私も恥ずかしながら、これまで知りませんでした。新しい世界、新しい味との出合いと言ったら大げさでしょうか。それ以来、私は市場の中で「ガンブツが売れ残らないかな」と思いながら注意深く見るようになりました。

前回、紹介した八角と同じように、ガンブツもナメタガレイやクチボソなどのカレイ類の箱に紛れ込んでいるあまり捕れない魚で、北海道では9月が旬です。所変われば、旬の時期が違うというのは、魚の世界ではよくあることです。ハタハタなら今は、鳥取など山陰地方で捕れたものがおいしいのです。

ヒラメの場合、寒ビラメと言って寒の時期の青森産が頂点という見方があります。では庄内浜はどうでしょう。実はこれからエンガワなど魚体の一部に脂がのり、おいしい時期を迎えるのです。ヒラメの脂というのは、しょうゆにつけた時、マグロのようにジュワーッと出るのではなく、しょうゆの表面にうっすらと浮かぶのです。

ソウハチガレイは庄内では今が旬です。そのおいしさにはびっくりしました。写真は干物です

一方で、この時期のヒラメを業界では「モチ」とも呼びます。身が軟らかくなり、刺し身に向かないものも出てくるのです。身に指を置くと、ズルルーと入っていくような状態のことを指します。ヒラメは、死後硬直が出たところで刺し身にしないとだめなのです。だから軟らかいままの「モチ」は刺し身にはなりません。

でもご安心ください。そのようなヒラメは、漁師さんやわれわれの段階で煮物などにしてはじいていますから、皆さんの口に入ることはありません。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年4月13日付紙面掲載

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