9月における底引き網漁の解禁は、庄内限定ではなく、全国的なものです。他県にもクチボソガレイはありますが、その中で福島県相馬沖のカレイが庄内のクチボソに似ていると言われています。実際、庄内にも福島からかなりの量が搬入されています。
相馬産と庄内産のクチボソには3倍くらいの価格差があります。庄内産の方が値段が高いのです。それでは、この価格差がどこからくるのかというと、庄内の人の地物に対するこだわりにあると言えるでしょう。
今の時期、全国的にはサンマとサケ、サバが旬ですが、庄内ではクチボソとハタハタの2本柱が話題の中心です。でも残念ながら、庄内では今、ハタハタはほとんど揚がっていません。漁場が新潟県の範囲内にあるため、庄内では漁獲がなく、山北町の寝屋港に水揚げされるのです。漁場は片道6時間、往復12時間という沖合、タラ場より奥にあります。そこにハタハタが生息しているのです。
ハタハタのおいしさには2種類あると思います。身がおいしいという人とブリコ派に分かれるようです。身を食べるなら、今の時期は脂が乗っていて最高です。
子を食べるなら11月以降です。山北町が漁場になるのは9、10月までで、11月初旬から庄内産が見えてくると思います。
鶴岡市場には昔から山北町の「あばさん」が魚を持って来ていました。ですから山北産の魚は、鶴岡市場では地元と同等に評価されています。
11月になると、今のハタハタの群れは新潟沖から庄内沖に移ってきます。そのころが庄内浜の旬と言えるでしょう。
前にもお話しましたが、魚の旬の時期というのは地域によっても大きく違ってきます。山陰地方や石川ではハタハタの旬は春になります。
全国的にはサケやサンマなどが旬だと言いました。でも、庄内の方には全国の流れに反して、今の時期のクチボソとハタハタにこだわってもらってもかまわないと私は思います。それだけ地元のものを大切にするという気持ちがあるということだからです。
次回は、もう一方の主役であるハタハタを中心にお話しようと思います。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年9月12日付紙面掲載