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今や高級な国産タラコ

読者から「スーパーでタラコを見ると、中国やアメリカが原産地で、国産は見かけません。タラコはスケトウダラの卵だそうですが、国内でスケトウダラが捕れなくなっているのでしょうか。それとも国産タラコは高級品で、スーパーでは売っていないのでしょうか」「このコーナーに生食用のコアミがなくなると載っていました。コアミやシラスのように小さな魚でおいしいものがあれば教えてください」という2つの質問をいただきました。

まずタラコについてお話しします。国産のタラコを見かけないというのはその通りだと思います。地域によって増減はあっても、スケトウダラの漁獲量は全国的にみれば確かに減っています。タラコはもともと、日本に合った食文化で、国内産でまかなっていました。そして今、国産タラコは量も少なく貴重品で、高級品と言ってよいと思います。

タラコの良しあしはどこで見分けるのでしょうか。ハララゴの時にお話ししましたが、タラコもやはり、捕れる時期によって状態が違います。若い時は粒子が軟らかく、ペースト状に近い感じでねっとりしています。逆に成熟したものは、食感がはっきりしています。これを業界で粒子感(りゅうしかん)と呼んでいます。成熟しすぎてしまうと、袋から流れ出るような状態になります。これを水子と呼びます。

ご飯に載せて食べるとおいしいタラコです

店頭に並んでいるのは、塩漬けにした塩タラコです。ご飯に載せて食べる塩タラコは、粒がはっきりしていてぱらぱら感、透明感がある成熟したものがよいと思います。

スケトウダラをこの辺ではスケソと呼び、漢字で助宗と書きます。塩漬けにしない生のタラコをわれわれは生スケコと呼んでいます。これも結構美味です。ほとんど流通していませんが、国内の一部の地域ではかなり食べているようです。生スケコの場合、若くペーストに近い方がおいしいと思います。

同じアメリカ産でも、捕れる海域や時期が違えば、品質も変わってきます。産地で評価を下すことはできません。生き物ですから1年を通じていいものを食べ続けるのは難しいかもしれません。

国産タラコがこの辺で流通していないのは、大半が北海道で作られているからです。ほとんどが地場で消費されているようです。北海道日本海側の岩内(いわない)という地域では国産のタラコしか食べないそうです。いろんな魚卵がありますが、イクラなどは海外でも生のまま食べられています。でもタラコは日本以外ではほとんど食べないので、外国で捕れたものの大半は日本に入ってきます。

小さな魚の話題に移ります。シラスはこちらでは捕れません。ほとんど太平洋側です。春先に出て生食するものを挙げると、青森などのシラウオ、三陸や宮城のイサザ、静岡のサクラエビ、日本海側に移って富山のシラエビ、富山から山陰にかけてのホタルイカといったところでしょうか。

ホタルイカも生で食べておいしい春の味覚ですが、生食用のホタルイカに添付してある紙に「はらわたを取り除いて食べてください」と書いてあります。はらわたに寄生虫のアニサキスがいる可能性があるからです。これでは生で食べる醍醐味を味わうことができません。「安全」という方向に向かうのは大切なことですが、コアミのように食べられなくなるものがほかにも出てくるのではないかと心配です。

皆さんはクロエビをご存じですか。コアミと一緒に捕れる小さなエビで、店頭で生きているものが飛び跳ねているのを見かけたことがあるかもしれません。やはり庄内浜に春の訪れを告げる海の幸で、生きているものを天ぷらにして食べます。

クロエビはコアミ漁で捕れるので、コアミ漁がなくなれば、クロエビも食べられなくなるわけです。残念です。手作りのコアミの塩辛を販売している魚屋さんが、生のコアミが捕れないと塩辛を作ることもできなくなると嘆いていました。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年2月21日付紙面掲載

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