読者から「フランス料理でシタビラメのムニエルという名前をよく聞きます。高級な感じがしますが、シタビラメは庄内で言うゾウリウオのことと聞きました。庄内で昔から食べられていたのですか。ほかにどんな料理にするとおいしいのでしょうか」という質問をいただきました。
シタビラメと言われる魚は日本にはいろいろいます。一般にシタビラメとはその魚たちの総称と考えてください。タラと言った場合、マダラやスケトウダラなどを含めて呼んでいるようなものです。
シタビラメは、シタウシノシタ、アマミウシノシタ、クロウシノシタ、アカシタビラメの4種類に大別されます。クロウシノシタとアカシタビラメで日本にいるシタビラメの大半を占めます。庄内でゾウリウオと呼ぶのはクロウシノシタのことです。海中にいるクロウシノシタを上から見ると黒、または茶色で、砂に面した方が白というように色が違います。その外観が、スライスする前の牛タンに似ているところから、クロウシノシタと名付けられたようです。庄内でゾウリウオと呼ぶのは、履きもののぞうりに形が似ているからです。
アカシタビラメは、庄内ではほとんど捕れません。どちらかというと南方系の魚です。アカシタビラメも、姿形が舌に似ているところから名前が付いたようです。こちらが日本ではムニエルの材料になり、高級とされています。ただ、地場産がないこともあり、この辺のフランス料理店では使われていません。アカシタビラメは、ムニエルを筆頭にグラタンやワイン蒸しといった洋風料理にされるようです。
一方、クロウシノシタは、煮付けやフライなどにするとおいしいようです。鶴岡市場にもちょくちょく入荷し、地元フランス料理店の有名シェフが買い付けていきます。ゾウリウオというのは、鶴岡、温海地区の呼び名で、酒田、遊佐方面ではネジリと言います。
クロウシノシタがほかの地域でどう呼ぱれているかについても調べてみました。東北の太平洋側ではベロ、北陸ではネズリが地方名でした。ネズリはなめるという意味だそうです。瀬戸内海の小島(おしま)ではゲタ、九州の一部でクツゾコ、鹿児島でセッタと言っているようです。やはり舌、または履きものが名前のルーツになっています。
シタビラメの仲間で、本場のフランス料理に使われるのはコモンソールという魚が最も有名で、ドーバーソールとも呼び、最上級品に位置づけられているようです。ソールとは靴底のことです。洋の東西を問わず、名前の由来は同じですね。
クロウシノシタは、以前は安い魚で、地元ではあまり好まれていませんでしたが、グルメ番組などで注目されるようになりました。煮付けもいいですが、個人的にはフランス料理屋さんで食べたいと思います。6月から8月までが旬の夏の魚です。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年6月19日付紙面掲載