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地域情報化の未来像を探る 地域情報化フォーラム

情報社会における地方の目指すビジネス展開(7)

多摩大学情報社会学研究所所長・公文俊平氏
講演する公文氏の写真

さらにそれに加えて情報革命です。ネットの環境に適応し、「智民」として人々は発展していって楽しい情報生活をつくっていく。先ほど言いました「ニート」とか「ギート」と呼ばれるような新時代の若者は、私のような古い世代の人間から見ると、「おかしな連中で、我慢することを知らない。束縛すると反発する。あんなやつらはだめだ」と言いたくなるかもしれません。しかし、そこに未来を開く可能性があるとすれば、この人たちが楽しく生きていけるような社会環境をつくってやり、彼らの能力を引き出すということを考えるのが上の世代の務めではなかろうかと思います。

梅田さんは新著『ウェブ時代をゆく』の中で、「産業化に匹敵するような次の新しい社会への転換が始まっている。それは智と情報のゲームの時代と考えられる」と述べていまして、私はわが意を得たりという気になりました。

その中心にいる人は決して長時間働くのは嫌という人ではなくて、例えばリナックスを作ったリーナス・トーバルズという人は、むしろ寝る暇もないくらい夢中になってリナックスを作ることに専念しました。Ruby(ルビー、プログラミング言語)を作ったまつもとゆきひろさんもそうですが、大変な働き者です。まさに自分の人生をそこにうずめるように自然になっているんです。そうした人に引き寄せられて、また新たなものを作り出す人が出てくる、そうしたコアを作れるかが勝負所になるかもしれません。

産業化という点では、第三次産業革命に対応した新しいインフラやプラットフォームをそれぞれの地域に作り出す必要があるということです。鶴岡にはまだまだブロードバンドのネットワークは十分に普及しているとは言えないと思います。私の家もADSLから先に行っていないんですけれども、光と無線のブロードバンドを作る。また、議論の余地はありますが、地域の情報を保持して引き出して使える地域データセンターのような仕組みを安く作る。そして、その管理人とは顔見知りで相談なども気軽にできるというようなことが望ましい。インフラがあり、それを使う人、サービスをする人の信頼関係を作ることです。また、まだ十分発展はしていないのですが、今後は確実に発展していくと思われるのは「地域でできる小額の決済・支払いシステム」です。感動したら何がしかの「お金」を差し上げるとでも言いましょうか。例えば、私の携帯で別の人の携帯に向けてクリックすると100円なり100ポイントがそちらの携帯に移るとして、送金料が100円につき1円であるとか10銭であるとすれば、気軽に感謝の意味でお金を支払うことができます。

新聞などでもそうです。記事を配信してもらって読んで、「この記事はよかった」と思ったらそこでクリックをひとつすると10円なり20円が新聞社の方に飛んでいくとかですね。それから、これは友達にも知らせてやりたいと思って、友達にその記事のことを知らせます。そこで友達もクリックすると新聞社にもお金が行くのですが、そのうち3円くらいは自分に入ってくる。

こんな仕組みがごく当たり前のように作られていくならば、地域でお金が回るわけです。ジャスコに落ちたお金はそのまま中央へ帰っていくけれど、こういう形で回したお金は地域に残ります。それでもまだ心配ならば今の「円」ではなく、別の通貨をこしらえて、地域ではそれを使うという工夫もあり得ると思います。ともかく、そういった仕組みを使ってこれまでのビジネスを再編成し、同時にテレワークの環境の中で新しいビジネスモデルを見直して固定顧客を増やすとか面白いビジネスを作るなどの課題に挑戦していくことが大切です。なにも若者だけが挑戦するとは思いませんが、基本的には挑戦をするのは若者とすれば、その若者を支えるための仕組みを上の世代の人々が作る。そして、新しいライフスタイルを作り出す。作り出したものを周囲に対して発信をする。

>> 「情報社会における地方の目指すビジネス展開」(8)

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公文 俊平 (くもん・しゅんぺい)
わが国の情報社会学会の創設者。経済企画庁客員研究官、東京大教養学部教授、国際大グローバル・コミュニケーション・センター所長、代表など歴任し、現在は多摩大情報社会学研究所所長。
>> 多摩大情報社会学研究所
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