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藤沢周平書籍作品あれこれ

藤沢周平の作品における風景

2 ふるさとの風景

◇挫折からの出発

藤沢さんは農家の二男として生まれ育ち、当時の一般的傾向としては上級学校への進学が困難な中、家族や教師の勧めによって、鶴岡中学校、山形師範学校へと進み、湯田川中学校(当時小学校と隣接して中学校があった。間もなく大泉中に併合されている)の国語の教師として赴任した。順調にゆけば、戦後の民主教育を担う新進教師として情熱あふれる活動を続けたに違いない。

しかし思いもよらず、結核罹患のため休職、やがて退職をよぎなくされて青年教師としての第一歩に挫折した。このことと、その後の闘病生活が、作家としての重要な栄養素となったことは皮肉であると同時に、ひとつの運命をも感じさせる。入院生活中、俳句の会に入ったことや「死」と向かい合わせの毎日の中で、多分「末期の眼」をもって、自分や自分の周囲を凝視し、鬱屈する思いを抱きながら20代の日々をすごしたことであろう。このことは、ちょうど鳥が卵を温め孵化する日を待つ姿に似ている。勿論、故郷にいつ帰れるのか、生活の場はどうなるのかといった不安・焦りの苦しみを私たちには想像すべくもないが、この時期を大きな転機として1人の作家が誕生する。

「風景の中に生きる人間」へ続く 

(筆者・松田静子/鶴岡藤沢周平文学愛好会顧問)
海坂かわら版
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