幼少のころ、近所にある生け垣の葉が成長すると、新芽を頂いた。おひたしやご飯にして食べた。何とも言えない香気が好ましく、素直にうまいと感じた。先祖から伝わる「香気好き」のDNAは、幼少のころに開花したのだろう。今回は、庄内の直売所でもなかなかお目にかかれないウコギを紹介する。
ウコギの「本場」は米沢市だ。米沢藩第9代藩主の上杉鷹山(ようざん)公が、藩の財政改革の一環で植栽を推奨したとも言われる。米沢の伝統食としてテレビニュースなどで紹介される場面を見たことがある人も多いだろう。
「『あー、あれのー』と驚く人や『珍しごど、まず買ってみっがのー』と言う年配者がいます」。遊佐町の遊佐駅待合室に4月、開設された産直スペース「ぽっぽや」でウコギを販売している佐藤清子さん=上戸=が買い物客の反応を話す。
佐藤さんは、町内の農業者で組織する若葉の会の代表を務め、月2回の定期市や東京都豊島区での直売などに取り組んできた。会員たちにとって、ぽっぽやは待望の常設店舗だ。
佐藤さんは3年前、「みそ汁に入れるものがない時、便利だよ」と酒田市内の知人からウコギの苗を譲り受けた。庭に植えた苗は、背丈を超える高さに成長した。「コシアブラやタラノメもウコギ科の仲間。春になると出てくる新芽を取ります。きれいな緑色で、ゆでるとさらにいい色になるんですよ」。
料理法を尋ねると、「これ、私が作ったウコギみそです」と瓶を手渡された。「ゆでて刻んだウコギをごま、みそとあえます。温かいご飯に載せるとおいしいし、おにぎりに入れてもいい」。緑色が交じったみそを見ているうちに、レモンを前にしたように唾液が出てきた。
「天ぷらにするとくせがないので誰でも食べられると思います。あえ物もいいし、ウコギご飯は見た目もきれいでおいしいですよ」。あえ物にご飯。幼少の記憶は間違いではなかったようだ。
おすすめレシピはウコギご飯。「コンブで炊いてだしを取るのがコツです。コンブには事前に包丁で切れ目を入れておくといいですよ」とアドバイスしてくれた。
帰宅後、炊きたてのご飯に頂いたウコギみそを載せた。バンケみそのような香気の強さはないが、上品な香りとみその味を引き立てる風味が熱々のご飯とマッチしている。これだけでも2杯はいけそうだ。
次に乱切りにしたウコギをご飯に混ぜ合わせ、ウコギご飯が完成。新緑を思わせるさわやかな香気が口いっぱいに広がった。「すがすがしさ」を感じさせる上品な味わいだ。見た目もよく、お客さんをもてなす時にも使えそうだ。今度は天ぷらも食べてみたい。
特に手入れも必要ないというから、わが家の垣根に植えたいと思った。カルシウムがホウレンソウの5倍、ビタミンCは3倍というのもうれしい。
佐藤さんのウコギは30グラム入って100円。遊佐駅駅舎「ゆざっとプラザ」内のぽっぽや=電0234(72)3758=で秋まで販売している。
ウコギ15グラム、米2合、コンブ1枚、塩
2008年6月7日付紙面掲載