「対面販売をしていると、『何だもんだ、これ』と聞かれるので『こうして食べる』と教えてあげるんですよ」。遊佐町の遊佐駅舎内の産直「ぽっぽや」でナガイモのムカゴを販売している伊藤巳暉(みき)さん=野沢=が話す。
ムカゴは漢字で「零余子」と書く。ナガイモやジネンジョのつるにできる小さな球状のイモのことだ。ナガイモの「子供」と言ってもいいかもしれない。
黒っぽい茶色。伊藤さんの話を聞くまではイモと一緒に地中にあるものだと思っていた。「ムカゴはつるに付くので、地上に出ています。みんなは捨てているのだと思います。もったいないですね」と笑う。
「昔は、おばあちゃんたちがムカゴを火にかけて、いって食べたそうです。食べ物が豊富になり見向きもされなかったのに、最近は見直され、いろんな調理法も紹介されています」。伊藤さん自身も数年前、テレビ番組でタレントがムカゴの煮込み料理を作るのを見て初めて知ったという。
4年前から10月に開かれる町の農林水産まつりで、ムカゴご飯を持参して試食、販売している。「珍しい」「昔、よく食べた」と懐かしがって買っていく人が多いのだとか。
「ムカゴご飯は、見た目はおいしそうに見えないけど、食べるとき皮も気にならない。塩、コショウと酒をふり、バターいためにするとビールのおつまみになります」と簡単にできる調理法を教えてくれた。大きいのはいため物、小さなものは炊き込みご飯にするのがいいようだ。
「福島に嫁いだ娘の夫が料理人で、蒸したムカゴの皮をむき、割いた焼きナスとあえて、ごまドレッシングで食べさせてくれた。ギンナンかと思って食べたら、うちで送ったムカゴだった。こんな食べ方もあるんだと驚きました」。いろんな料理に応用できそうだ。
帰宅後、いただいたムカゴをバター焼きにしてみた。時間の加減が分からず、少し硬かったが、ナガイモのねっとり感とイモ類特有のホコホコ感、そして香ばしさを味わうことができた。後で伊藤さんに聞いたら「弱火で10分」が目安らしい。
ムカゴご飯は「もち米は絶対入れた方がいい」というアドバイスに従い、米2対もち米1の割合で炊きあげた。炊飯器のふたを開けると、小さなムカゴが目に飛び込んできた。「ウサギのふんみたい」と、横で茶々を入れられたが、ムカゴは軟らかく、ご飯との相性も悪くない。郷愁誘う懐かしの味といったら分かってもらえるだろうか。
伊藤さんのムカゴは大小2種類、どちらも150グラム入って1袋150円。遊佐駅駅舎「ゆざっとプラザ」内のぽっぽや=電0234(72)3758=で販売している。
米2合、もち米1合、ムカゴ100グラム、酒大さじ1、塩少々
2008年9月20日付紙面掲載