「めんたま畑に赤い大根葉があるそうです。1回目の収穫はまもなく終了らしいので、次回の素材にどうでしょう」。県庄内総合支庁酒田農業技術普及課の提案に「それはおもしろそう。ぜひ」と即座に応じ、須田眞子さん=酒田市山楯=を訪ねた。
「静(しず)むらさきというんです。ロマンチックな名前でしょう」。須田さんはこう語った後、「種苗メーカーのカタログを見て興味を持ちました。物好きなのでちょっと冒険して、変わったものを植えてみたいんです。ほかの生産者に『あら珍しいのー』と言われると楽しいし」と、いたずらっぽく笑った。
夏野菜とハウス物の端境期を補う葉野菜として試験的に栽培したそうだ。「普通の大根葉と並べて売っています。数はそれほど出していないけど、その日のうちに全部売れてしまいます」と手応えを感じている。
以前、茎が赤いサラダほうれん草を取り上げた。赤い大根葉もそんな感じかと思っていると、「赤いのは茎で葉っぱは普通の大根葉です」。実物を見ると、なるほど葉の形と色は大根葉そのもの。茎は、静むらさきという名にたがわぬ、品の良い紫色をしている。
食べ方は普通の大根葉と同じなのだろうか。「カタログには浅漬けに適していると書いてありました。うちでは漬物はあまりやらないけど、作ってみました」と塩だけの浅漬けと市販の「素」を使った2種類を出してくれた。
「大根葉よりしゃきしゃきしていると思いますよ」という須田さんの言葉を聞きながら、まず塩漬けを口に入れてみた。しゃきしゃき感が心地よい。大根葉を生で食べたことがないので、単純に比較はできないが、“本家”以上だろう。浅漬けの素を使った方は塩漬けほどのしゃきしゃき感はなかった。
「静むらさきは、火を通すと赤い色が落ちてしまいます」。次に油揚げ(薄揚げ)とのいため物をいただいた。ニンジンが彩りを添えているが、品の良い紫色は落ちてしまった。でもしゃきしゃきとした食感は、普通の大根葉より上に感じる。
みずみずしさを生かすには生食がいいかもしれない。カロテン、ビタミンCを多く含んでいるというのもうれしい。帰宅後、おひたしにしてみた。紫色は薄くなっていたが、しゃきりとした食感は〝健在〟だった。今度はサラダも食べてみたい。
「1回目は19日で売り切り、次の収穫は11月末ごろになるかも」と須田さんが話す静むらさきは1束100円。酒田市飛鳥のめんたま畑=電0234(61)7200=で販売している。
静むらさき1束、油揚げ(薄揚げ)2枚、めんつゆ、酒
好みで隠し味に砂糖を使ってもいい
2008年10月18日付紙面掲載