今回は種子島生まれの高級サツマイモ「安納芋(あんのういも)」を取り上げる。「またイモか」と思う読者もいるかもしれないが、試食した編集局の女性スタッフたちも「おいしい」と絶賛したので、読者にも納得してもらえると思う。
「昨年、義父が『日本一おいしいイモ』と書かれた表示にひかれ、あるスーパーから食用に買ってきたんです。でも、値段が高くて、『口に入れられない。種イモにしよう』と栽培してしまったんです」。三川町の産直みかわで安納芋を販売している奥山美智さん=鶴岡市道地=がいたずらっぽく笑った。
取材をお願いした際、「今年の分は少ししか残っていないので」と固辞されたが、「サツマイモが好きな人は多い。貴重な情報だからぜひ読者に伝えたい」と口説き落とした。
「これなんです」。奥山さんがさっそく安納芋を持ってきてくれた。「斑点みたいなくぼみがあるのが特徴です。切断面は薄いピンク系のオレンジ色です。切ってみますか」。残り少ないのにもったいない、と思っていると、奥山さんが「ストン」とナイフを入れた。山吹色に近いかもしれない。「形も桜の花びらのように鮮やかです」。確かに切断面は花びらみたいだ。
「私は素揚げにするのが一番おいしいと思います。ちょっと塩を振りました。食べてみてください」とすすめられ、口に入れた。とても甘い。今まで食べたサツマイモの中で一番だと思う。
次におすすめレシピのチップサンドを食べてみた。「酒田の料理屋さんで修業中のめいっ子が教えてくれたんです」という逸品。これも甘みたっぷり。ふかした安納芋もごちそうになったが、甘みにクリームのようなねっとりとした食感が加わり、スイーツのような味わいだ。サツマイモ独特の腹にどしりと来るところがない。
「私はサツマイモもジャガイモもあまり好きじゃないので食べません。でもこのイモは別」と言うのもうなずける。サツマイモに対する概念が変わる、と言うと大げさかもしれないが、存在そのものがスイーツみたいだ。
気になるお値段は400グラムで290円。ほかのサツマイモが700グラムで200円というからかなりの「高級品」だが、「収量はほかのサツマイモの半分以下です」。価格には理由があった。高くても食べたい、やみつきになりそうなサツマイモなのは間違いない。
奥山さんは、種子島で栽培された安納芋も食べてみたそうだ。「食べ比べたら味は同じでした」。本場に負けない出来だった。「来年は義父に作り方を教わって自分でもやってみたい」と意欲を燃やす。
安納芋800グラム、砂糖少々
冷めたらレンジで温めてもよい。
2008年11月22日付紙面掲載