手作りコンニャクがおいしいとは聞いていた。産直施設で材料となるコンニャクイモを見て、買っていく人はいるのだろうかと思ったことがある。しかし、「うまい物好き」の間ではちょっとしたブームらしい。
「今年も断っては申し訳ないと思い、取材をお受けしました」。鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」でコンニャクイモを販売している阿部さだ子さん=谷定=が笑顔で出迎えてくれた。
昨年3月、阿部さんにコンニャクイモの取材をお願いした際、「きょう出したのが最後なので勘弁して」と断られた。2年越しの思いがかなったことになる。
阿部さんは8年ほど前、地区内の知人に種イモを分けてもらい、栽培を始めた。コンニャク作りはその時が初体験。以来、魅力にとりつかれ、山形大農学部の海外留学生たちに作り方を伝授したこともある。
春に種イモを定植し、秋に掘り起こす。ひと冬置いてまた春に定植。4年間繰り返すと花が咲き、コンニャクイモとしての役割を終えるのだそうだ。爆発的に売れるものではないが、毎年楽しみにしている常連が多いらしい。「買ってくれた方から『失敗したー。どうしたらいい』と電話をもらったこともあります」。
秋に掘り出したコンニャクイモを見せてもらった。玄関口のコンクリートの上に乗せると色がよく似ている。見た目はあまりよくない。球根を大きくしたような形だ。表現が難しいなと思っていると、阿部さんが「石みたいでしょう」と助け船を出してくれた。
手作りコンニャクはそれほどおいしいのだろうか。疑問を口にすると「それはもう。違いは歴然です」と阿部さんが断言する。
「昨日作ったものです」。阿部さんの手作りコンニャクは、市販のものよりやや茶色っぽい色だ。「生」のままだし汁に浸したものと、しょうゆで煮付けたものと2品をごちそうになった。
市販のコンニャクのようなつるりとした食感ではなく、つるつるとした中に「ざらざら感」がする。かみしめていくとより違いが分かる。懐かしい味だ。
「うちでは野菜との煮物やおでんだねなどに使います。寒ダラの子づけもいいですよ。2、3日おきに水を替えれば、今なら1カ月はもちます」。作り置きしておくといろんな料理に重宝しそうだ。
コンニャク作りには石灰が必要だが、常備している人はほとんどいないだろう。「めったに使うものではないので、私はコンニャクイモに付けて売っています」という心遣いもうれしい。
帰宅後、いただいたコンニャクを刺し身で食べてみたが、そのおいしかったこと。わさびよりからしの方が合うように感じた。鶏肉や厚揚げ、地物の缶詰孟宗との煮物も家族に好評だった。メタボ防止にもなりそうなので、しばらく晩酌のお供に食べ続けようと思っている。
阿部さんのコンニャクイモは1キロ当たり500円。鶴岡市覚岸寺のしゃきっと=電0235(29)9963=で販売している。
コンニャクイモ1キロ、石灰10グラム、水
作っているうちにかなりふくれるので大きめの鍋を使う。分量はコンニャクイモの量によって加減する。
2009年1月24日付紙面掲載