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「かつお菜」春を告げる露地野菜

酒田市の旧鵜渡川原村(現在の亀ケ崎地区の一部)に、春の訪れを告げる「かつお菜」という野菜がある。子供のおやつにもなり、生活に密着した食材だった。しかし、栽培農家の減少で近年、「絶滅」が心配されている。

「店に出しているのはわたしと隣の家を含めて3人だと思います。自家用に作っている人はいるかもしれませんが…」。同市のみどりの里「山居館」でかつお菜を販売している児玉静子さん=亀ケ崎四丁目=が話す。

児玉さんにお会いするのは今回が2度目。2006年4月に「『かつお菜』絶滅の危機」という見出しが付いた記事を書いて以来3年ぶりだ。

生命力を感じさせるかつお菜。酒田に春の訪れを告げる野菜だ

前回の取材前、初めて聞く野菜の予備知識を得ようと、在来野菜を研究している山形大農学部の江頭宏昌准教授に電話したところ「福岡では雑煮に欠かせない野菜です。庄内にあるとは初耳ですね」という答えが返ってきた。興味を持った江頭准教授と一緒に取材した結果、福岡のかつお菜とは別物の野菜と判明した。

児玉さんが昭和40年代に嫁いできた時には地区の大勢の農家が露地栽培していたそうだ。3月中旬に収穫期を迎えるが、1カ月ほどで茎が硬くなってしまう。旬が短い野菜でもある。

江頭准教授は単行本「どこかの畑の片すみで」(山形在来作物研究会編)の中で、「分析結果を待たなければ断定できないが」と前置きした上で「古い小松菜の一系統であろう」と推測している。

自宅裏の畑に連れて行ってもらった。かつお菜は小松菜より緑色が少し薄く、葉の形は荒々しい感じがする。縦に伸びる小松菜に対し、かつお菜は横に広がる形で成長していく。生命力の強さだろうか。

かつお菜は、桜が咲く前に食べられる露地物の葉野菜として昔から酒田っ子に愛されてきた。自家用車が普及する前は、地区の農家がリヤカーで市街地に「春の味」を運んでいたそうだ。

食べ方だが、「ゆでてみそ汁やけんちんでどうぞ。いろんな野菜と組み合わせてみてください」と児玉さん。小松菜と同じような使い方ができるようだ。

ゆでたかつお菜をごちそうになった。「ちょっと苦みがあるかもしれません」と言われたが、全然苦くはない。甘みがあっておいしい。ゆでると鮮やかな緑色に「変貌」するのがおもしろい。料理の色づけやうどんに載せるのもいいと思った。

「けんちんにする時も下ゆでした方がいいようです。硬めだとガツガツしているので、少し軟らかめにゆでて下さい。すぐに上げず、水に5分ぐらいさらしておくのがいいでしょう」と教えてくれた。「当たり前に食べている野菜なので、料理法なんて考えたこともありません」ということで、おすすめレシピはなし。

名前の由来について地元の農家には「かつお節のようなうまみがあるからだろう」と話す人もいる。「酒田の春ガツオ」を待ちわびている人は多いようだ。

旬が短いかつお菜は300グラム入って1束100円。酒田市山居町一丁目の山居館=電0234(26)6222=で4月中ごろまで販売している。

2009年3月21日付紙面掲載

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