「うちのモロヘイヤは捨てるところがない。葉っぱだけでなく、茎まで食べられます」。鶴岡市藤島地区の「ぽっぽの湯農産物直売所」にモロヘイヤを出荷している坂本淳子さん=楪(ゆずりは)=が胸を張った。
モロヘイヤはエジプト原産の緑野菜。原因不明の病に倒れた古代エジプトの王が、モロヘイヤで作ったスープを飲んで重病を克服したという言い伝えにちなみ、「王様だけのもの」という意味の名が付いた。ビタミンA、カロテンがホウレン草の約3.5倍、カルシウムが約7倍という栄養価の高さが注目を集め、日本では1980年代に各地で栽培されるようになった。
旧藤島町が89年、「モロヘイヤの里」を掲げ、栽培、料理法の普及活動に乗り出した。最盛期には坂本さんが住む楪地区の20軒近くが栽培していたが、高齢化などで現在、栽培農家は数軒しかなくなった。
「週に1回、酒田市内のスーパーを回り、ゆでたモロヘイヤと天ぷらの試食、販売を行いました。食べ方を知らないと消費者は買ってくれませんから」と普及に打ち込んでいたころを振り返る。
ぽっぽの湯には生のモロヘイヤと粉末の2タイプを出荷している。生は70g入りパックを105円、粉末は50g入りを380円で販売している。
ゆでたモロヘイヤからは独特のぬめりが出る。納豆やオクラなどと同じ「ネバネバ系」だ。そのぬめりを受け入れることができるか、好みの分かれるところでもある。
「今の季節は、ゆでてきざんだモロヘイヤを冷や奴に添えて毎日のように食べています。娘は生のままスープに刻んで入れます。タマネギとニンジンのスライスにゆでたモロヘイヤとしょうが、だし汁を加えてもおいしいですよ」と坂本家での調理法教えてくれた。
「モロヘイヤが好きな人はツルムラサキと一緒に買っていきます」。ツルムラサキもぬめりがある野菜。夏が旬の2つの野菜をセットで購入するファンも多いという。
粉末のモロヘイヤについて「孫たちが好きなので、ホットケーキに入れたり、天ぷら粉と混ぜたり、隠し味に使っています」と「伝授」してくれた。坂本さんは自宅でうどんを打つ際、生地に粉末モロヘイヤを入れ、嫁いだ娘にも宅配で送る。これが好評だという。
自宅そばのハウスに連れて行ってもらった。2棟のうち1棟はモロヘイヤとツルムラサキが半分ずつ植えられていた。鮮やかな濃い緑色が夏到来を感じさせる。「今年はいつもより早めの田植え前に定植したので、例年より10日ほど早く5月末に出荷が始まりました。8月末まで収穫できると思います」と話す。
坂本さんは、ゆでたモロヘイヤを1食分ずつ袋に入れ冷凍し、冬などに小出しにして使っている。「葉物がない時期にはとても重宝しています」と笑った。
帰宅後、ゆでたモロヘイヤをたたいて、なんぜんじと一緒に食べてみた。ネバネバが豆腐とよく合い、薬味とはまた違った風味を味わうことができた。暑い夏を乗り切るわが家の定番料理の誕生を予感させた。
ご飯480g、ひき肉100g、ニンジン50g、タマネギ100g、粒コーン50g、モロヘイヤ30g、バター 大さじ2、カレー粉 小さじ2、塩 小さじ1/2、こしょう少々
2006年6月17日付紙面掲載